法律のいろは

更新日:2017.05.03

カテゴリー:労働問題のご相談

業務怠慢や問題行動を理由とする中途入社従業員の使用期間中の解雇に関する問題(裁判例紹介)

 新卒採用であれ,中途入社の採用であれ,就業規則などで試用期間を定めている会社は多いのではないでしょうか?試用期間内の勤務態度などを見て,本採用するかどうかを決めるのが通常と思われますが,試用期間中の解雇・本採用しないという点については,裁判例上規制が存在しています。今回は,表題のとおりの中途入社の方の試用期間の中での解雇(厳密には,解約留保権の行使)についての最近の裁判例を通して,こうした事柄への会社のリスクを触れていきます。

 

 まず,こうした試用期間中の解雇については,新規採用者を本採用しないという点への有名な最高裁の判断が存在します。それによると,試用期間は先ほど触れた趣旨であるため通常の「解雇」(会社が一方的に雇用の終了を告げる)とは異なって,会社の裁量は広いものの,勤務開始後の態度などから見て・解雇を告げることが,解約留保の趣旨から見て相当と認められた場合に有効とする(不相当の場合は無効)となると判断しています。

 問題となったケースでは,外国人を日本の企業などに紹介する事業に関連して在留資格を申請することなどを営む行政書士法人に営業職などとして採用された方が,その試用期間中に,業務怠慢・業務命令違反等を理由に解雇をされたというものです。この従業員の方が解雇を無効として,引き続き従業員であることの確認・解雇に至る経緯が不法行為であることを理由に損害賠償請求を求めたものです。ここでいう損害賠償請求には,引き続き雇用された場合に得られたであろうお金(逸失利益と呼ばれるもの)・慰謝料が含まれています。また,このケースでは採用から解雇の通知まで2週間という期間です。

 

 主な争点として,業務怠慢や業務命令違反が存在するか・存在したとしても解雇を相当とするまでの事情か等がありました。問題となった業務怠慢などの事情は,

 ①営業活動の報告を行っておらず実際に営業活動をしていないのではないか

 ②業務に必要な社内資格の試験を無断でさぼったのではないか

 ③こうした状況を踏まえて会社側が出した出勤停止と始末書の提出などに応じないこと+こうした措置に多額の金銭請求をしてきたこと

 等が挙げられています。

 

 こうした事柄について,①について,報告がなされてはいなかったものの営業活動が全くなされていないとはいいがたいと判断しています。こうした状況を踏まえて,会社側が助言のみで事実を確認して注意をするなどしていない状況で採用から2週間という期間で解雇を通知するのは,解雇の相当性がないという判断をしています。言い換えれば,もう少し確認をして注意をしたけれども,営業活動の状況に問題があり改善がないというところがあれば,解雇の相当性を裏付ける可能性があることになります。

 

 次に②について,社内の試験についてあることをミスによって当該従業員は知らなかったものの,前日に家庭の事情で受験できない旨を伝えており,全くの虫とは異なること・この社内試験が業務に不可欠とまでは言えないこと・正当な理由なく2回無視した場合に減給などの解雇より軽い処分に過ぎないことを理由に,解雇の相当性を否定しています。

 こうした点の最初のところは,悪質性が低いことを占めてい居ると考えられます。次の部分は,社内試験を受けないことが大きなペナルテイの対象となるほどとは考え難いことをいうものでしょう。最後の部分は,このケースでは1回受験しなかったことが問題になっていますが,2回無視してもより軽い処分なのに1回で重い処分は不当であるということを示しています。

 言い換えれば,悪質性と業務への影響が大きな業務命令の無視は,解雇の相当性につながりやすいものの,他の場合と比べての均衡も要求されていることと言えるでしょう。

 

 ③については,①と②を踏まえて出勤停止命令を出す必要があったのかどうかと関わりますが,①と②の先ほどの判断からそこまでの必要性はなかったと判断しています。そのうえで,金銭の請求は退職勧奨と思っても仕方がない事情のあるもとでその条件を出したことが当然に不当とは言えないと判断し,全体として解雇の相当性を否定しています。

 ①と②の事情によってはこの点の判断も変わってくる可能性があります。

 

 裁判所の判断では,こうした①~③の点を踏まえて,解雇は不相当で無効であると述べています。ただし,実際の勤務条件の下では元従業員側が勤務しなかったと述べた点を根拠に就労の意思がないからということで,従業員の地位の確認は認めていません。また,解雇に至る経緯に関して,損害賠償の支払い義務が会社には生じるとしていますが,実際の勤務条件の下では働かなったと述べる元従業員側の意向を踏まえて,早期に退職をしていたからということで2か月分のきゅりょう相当額を損害としています。また,慰謝料に関しては,先ほどの損害を踏まえてなお精神的苦痛を埋めるための損害は考えられないと判断をしています。

 この判断からは,長期に勤務する予定があった場合には損害が大きくなる可能性がありますし,解雇に至る経緯に関して問題が大きければ慰謝料の支払いが生じる可能性もありえます。

 

 解約権の留保であっても,相当性という点(解約権の留保を行使せざるを得なかった事情,このケースのように早めに行使した場合にはそれだけやむを得なかった事情が大きい必要性があります)は大きな問題となります。その後のリスク(従業員の地位確認を受けるリスクとお金の支払い義務がどこまで生じかねないのか)という点・その方が引き続き勤務することの弊害をよく考慮して対応を決める必要があるでしょう。詳細は,状況に応じて弁護士など専門家に相談をした方がいいでしょう。

メールでのお問い合わせ

早くから弁護士のサポートを得ることで,解決できることがたくさんあります。
後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。

勁草(けいそう)法律事務所

Copyright © 2001- KEISO Law Firm. All Rights Reserved.