法律のいろは

財産分与と詐害行為取消(2)

2014年3月28日 更新 

 前回(少し前になりますが…)詐害行為取消全般についての説明で終わってしまいましたが、今回はその続きです。

 詐害行為取消権が認められるには、いくつかの要件を充たす必要があるとお話ししました。財産分与が詐害行為取り消しできるには、財産分与が「詐害行為」にあたるかが問題になってきます。

 財産分与が、この「詐害行為」にあたるかが問題となるのは、「詐害行為」取消権が債務者の財産確保のための制度であることと関連します。

 つまり詐害行為といえるには、財産権を目的としたものに限るとされていますが、離婚、養子縁組などといった、身分関係の変動に関する行為は、結果的にそれにより債務者の財産が減少することがあっても、「詐害行為」として取消の対象とはならないとされているからです。

 また、離婚や養子縁組といった家族に関するものは、あくまでも債務者が自由に決めるべきであって、そういった事柄に債権者が入り込むべきでないとも考えられています。

 ただ、財産分与は離婚といった身分関係の解消そのものではなく、それに伴って生じる財産の変動なので、上記のことがそのままあてはまるわけではありません。

 判例でも、財産分与の額が不相当に大きく、財産分与に名を借りてなされたにすぎないといえる特段の事情がない限り、詐害行為にならないとしています。そして、財産分与として相当な範囲を超えてなされていれば、超えた部分については取消できると判断しています。

 同じことは、財産分与だけではなく、離婚に際しての慰謝料支払いの合意をした場合にもあてはまります。すなわち、そのような支払自体は支払う側が有責であることから離婚せざるをえなくなったことによるものなので、すでに発生している損害賠償債務の存在を確認し、賠償額を決めて支払うものです。したがって、「詐害行為」とはならないといえます。

 しかし、本来負担すべきといえる金額を超えて損害賠償債務を支払うことで話をつけているときは、慰謝料支払を名目とした贈与か、金銭的につり合いのとれていない新たな債務負担行為にあたり、取消の対象となりうるので注意が必要です。

 

 

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