法律のいろは

こんな理由で離婚できるでしょうか?(その⑱)

2014年2月22日 更新 

 離婚が問題になるところでよく出てくる話で,どのくらいの別居していれば相手が嫌と言っても離婚できるでしょうか,というものが出てくる印象があります。以前も触れましたように,いちがいに何年別居していれば,絶対に離婚できるというのはないように思われます。

 あくまでも,別居に至る理由や別居後の状態ややり取りの内容(やりとりがない場合を含めて)をふまえたもので,かつ他の事情も踏まえることになると考えておいた方がいいように思われます。民法改正要綱で5年という区切りが示されていますが,これもあくまでそういう案が示されたにすぎないと考えた方がいいでしょう。民法改正要綱というのは,離婚を含めた家族に関する民法という法律の定めについて,法制審議会というところが一つの案を示したものです。

 

 実際に今回は結婚期間が長い熟年夫婦において,別居1年でも夫婦関係が修復し難いから離婚を認めた判決を紹介します。

 問題になったケースは,いわゆる熟年夫婦で離婚調停を申し立てるまで18年近く結婚生活を送っていたケースです。別居後,調停が不調になり,家庭裁判所の離婚裁判・高等裁判所の控訴審まで1年程度しか別居期間がないものです。夫が,妻から悪口を言われた・夫の前妻の位牌を(夫の前妻は死亡)前妻の実家に勝手に送り返された・勝手にアルバムを捨てられるなどしたから,夫婦関係は修復できないと主張していました。

 

 細かな事情は色々とあるケースですが,こうした事実(夫側が主張した事実)家庭裁判所・高等裁判所共に認めながらも,正反対の結論を出しています。第1審の家庭裁判所では,夫の主張する事情では夫婦関係が修復できないとまではいえないうえに,別居期間も1年未満では修復ができないとまではいえないと判断しています。

 これに対し,控訴審の高等裁判所では,高齢の夫にとって,夫の主張する事柄が非常に屈辱的なものであって,妻がそのことへの理解を欠けていること等を述べて,夫婦関係の基となる信頼が完全に壊れていると判断しています。

 

 ここでは,別居期間というよりも,夫婦関係の修復があるかどうかの前提となる事項(信頼関係の基礎となること)が失われることがあるのかどうかが相当重視されているといえます。ですから,別居自体が同居義務が守られていないという意味で夫婦関係の修復のバロメーターの一つにはなるにしても,それ以外の事情も相当重要であることを示しているといえるでしょう。

 どういった事情が夫婦の間であったのかなどを整理した方がいいように思われます。

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