法律のいろは

婚姻費用の払い過ぎは,離婚の際の財産分与で考慮されるの?

2014年3月3日 更新 

 生活費(婚姻費用)の未払いは離婚の際の財産分与を考えるうえでの一要素として考えられる点は依然触れました。婚姻費用は,折り合いが夫婦間で付かない場合(かつ別居している場合)には,一般には算定表に基づいて家庭裁判所での手続きで,決められる傾向にあります。この金額よりも上回るお金を支払っていた場合に,その上回る部分がどう扱われるのかについて,今回は裁判例をひとつ紹介します。

 

 ケースとしては,別居後10年近くたって,婚姻費用の支払いを求める調停が起こされ,決まった後はきまった金額の支払いがなされたけれども,それ以前の期間に決まった謹賀を上回るお金が婚姻費用(生活費)として支払われたものです。離婚判決によって離婚した後に,財産分与などの支払いを求める調停(話し合いがつかなかったため,裁判官の判断である審判に移行)を申し立てたケースになります。

 

 このケースで問題となったのは,支払い杉のあった生活費(婚姻費用)が,離婚後の生活援助としての財産分与を先に渡したと言えるかどうかという点です。先渡しと言えれば,財産分与で渡す〈もらう)金額は少なくなり,いえなければもらう〈渡す)金額が多くなる関係にあります。

 このケースで,裁判所は第1審と第2審で全く逆の結論を出しています。第1審は,大幅な超過が存在する(ただし,生活費〈婚姻費用)の調停が終わった後は超過はない)ことから,先渡しに当ると判断しています。これに対して,第2審は,先渡しには当たらないと判断しています。第2審では,調停で話が付いた金額や自発的に払う金額は,裁判所が判断で使う基準となる算定表の金額を上回るからといって,直ちに財産分与の先渡しとは言えないと判断しています。あくまでも極めて大きいと言えた場合であると述べています。

 こうした判断からは,払い過ぎだから先渡しと言えるのはかなり限られたケースになります。ちなみに先ほどのケースでは,年額数十万円算定表を上回る金額を払っていたようです。第1審はトータルの支払いが大きいから先渡しと判断していますが,第2審は全体として見ていると考えられるかもしれません。

 

 この高裁の判断(第2審)を前提にすると,相当程度上回るレベルというレアケースで初めて先渡しになります。婚姻費用の支払いや財産分与を考えるにあたっては,こうした判断があることも頭の片隅に置いておいた方がいいかもしれませんね。

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