法律のいろは

婚姻費用と公的扶助

2014年5月17日 更新 

 以前、婚姻費用に関するコラムで、子ども手当や児童扶養手当といった、公的な扶助についてどう考えるかについてお話ししたと思います。

 婚姻費用は夫婦がお互い支え合って生活を維持していく上での費用ですから、通常はそれぞれの収入、資産の範囲内でやりくりすべきものといえます。

 それでもやっていくことが難しい場合に、公的扶助を受けるというのが前提ですから、公的扶助があるからといって支払を免れたり、支払額から公的扶助分を引くようなことは原則としてありません。

 ただ、場合によっては考慮されることもありえます。 

 その一つとして、地方公共団体が、少子化対策の一環などとして支給する出産育児一時金に関する裁判例があります。

 これは、夫(相手方)が、妻(申立人)に対して出産費用として55万円を渡し、そののち妻が健康保険から出産育児一時金の交付を受けていることから、交付を受けた金額を考慮し、出産費用として平均的に必要とされる額からの差額分(6万円)のうち、相手方の負担割合を半分とみると、結局のところ出産費用としては相手方の負担は3万円と判断しています。そして、55万円の交付は婚姻費用の前払いとしています。

 このケースでは、申立人が現にかかった出産費用を明らかにしていなかったことから、平均的な金額をベースに考えていますが、いずれにせよ、出産育児一時金がまとまって支給されており、まずはそれから出産費用は優先的にまかなわれるべきとしています。

 出産に関する費用を単純に収入によらずに半分ずつと考えてよいかという点で検討の余地がありますが、このケースでは申立人も出産・育児休暇中とはいえ、復職予定であり、その後の収入も同額が保障されているという場合ですので、例外的にまとまった公的給付があれば考慮されるケースといえるでしょう。

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