法律のいろは

年金分割の按分割合が0.5未満になるケース

2014年10月4日 更新 

 年金分割をする際、年金の報酬比例部分の年金額の算定基礎になる、標準報酬などについて、夫婦であった者の合意または裁判により分割割合を定めますが、その按分割合は原則0.5になるということは、これまでも度々お話ししたとおりです。

 では、按分割合が0.5未満で認められるケースはあるのでしょうか。

 昨年のことになりますが、按分割合を0.3と定める審判が出ました。

 この事案は、申立人が夫で、相手方が妻、争いになっている年金が妻が加入していた共済年金についての按分割合というやや特殊なケースです。

 裁判所は、年金分割の制度が、夫婦双方の老後等のための所得保障としての機能をもつ制度であるから、対象期間中の保険料納付に対する(夫または妻の)寄与の程度は、特別の事情がない限り、互いに同じとみて、按分割合を0.5と定めるのが相当としています。

 そして、特別の事情があるとみるべきなのは、年金分割の制度からすれば、保険料納付に対しての夫婦の寄与が同じとみるのが不当である例外的なケースに限るとしています。

 上記のケースでは、夫には多額の借入があり、妻にも借入があるなど妻に家計のやりくりの負担がかかっていたこと、妻が夫の退職後勤めるようになり、4年すぎて以降は妻の収入で家計を維持していたといえる一方、夫は結婚後30年余り相当の収入を得て、退職金で大部分の借入金を返済していたこと、妻は30年近くおおむね専業主婦として生活し、夫の給与所得で生計を立てていたこと、双方退職金額を明らかにしていないこと、財産分与時の事情(すでに離婚調停は成立)などから、寄与割合を婚姻期間50年と、夫の収入で生計を維持していた30年とを対比させ、年金分割の按分割合を0.3としました。

 この裁判例では、夫の退職前の収入や財産分与の内容について触れていますが、これらは、夫の相手方への寄与をゼロとするのは相当でないとの理由に挙げられているものの、按分割合を決める上で反映されたかは不明です。

 ただ、今後はこれまでよく年金分割が問題になった、いわゆる熟年離婚で妻が専業主婦という場合よりも、今回のように妻が結婚後一旦専業主婦をしていたものの、のちに就職して収入を得ることになった、あるいは共働きで妻の方が収入が多いという場合、夫から妻への年金分割が問題になることが増えてくるかもしれません。そういった場合に参考になる裁判例だと思います。

 

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