法律のいろは

財産分与と婚姻費用(ある裁判例の考え方)

2015年1月6日 更新 

 過大な婚姻費用(生活費)を結婚中に支払っていた場合に,離婚の際の財産分与で考慮されるという話は以前触れました。実際どこまで考慮されるかという点について,数年前のある高等裁判所の判断を紹介します。

 

  これは,別居期間が10年を超えた夫婦に関して,夫が妻側に自発的に生活費を送金していたケースです。自発的に送金していた 金額がいわゆる算定表で決まる金額を超えていて,長期ゆえに相当大きな金額になった部分が財産分与の前渡しにあたるかどうかが争点となりました。実際の裁判例ではほかにも争点はありますが,この部分を触れることにします。

 算定表で決まる金額を超えた部分が全て当然に財産分与の前渡しとなれば,当然財産分与をした扱いになる⇒離婚時に新たに分与するべき金額が減るために,反対する相手方との間で対立が生じたと考えられます。ちなみに,こういったことは離婚裁判でも問題になるところです。

 

 高等裁判所の判断は,結論から言えば,算定表で決まる金額を超えた部分は,色々な状況を考えて,著しく不相当な金額を払っていた場合のみ,財産分与を先行して行った扱いにするとのものです。つまり,算定表で決まった金額を超えて支払っていても,それは離婚時にはそう簡単には考慮されないという事をいうものになります。

 この裁判例では,別居期間における月あたりの平均送金生活費の額を出して,それぞれの時期の算定表で定まる額と比べています。また,就労状況や家事育児状況等の生活状況(主には生活費を貰う側)を考慮したうえで,著しく不相当な金額を払っていた訳ではないとの結論に至っています。長期の別居になれば,当然少しずつ大きな金額を払っていても多額にはなりますが,そう簡単には離婚時に清算はできないことになっていきます。

 

 もちろん,この裁判例の考え方で裁判所の考え方が固まりきったわけではありませんが,別居などをして生活費を決める際には,後で簡単には清算できないリスクもありえる点には注意が必要かもしれません。

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