法律のいろは

保険金と離婚の際の財産分与(その③)

2015年1月14日 更新 

 これまで二度生命保険と損害保険(といっても,厳密には交通事故の加害者から受け取る損害賠償金)について,離婚の際の財産分与の対象になるかどうかという話を触れました。今回は,交通事故の際に受け取った保険金について,前回紹介した裁判例に反するように見える例を紹介したいと思います。

 紹介するケースはそこそこ古いものですが,夫の不貞行為が離婚の原因か・財産分与の対象に交通事故の被害にあった際に受け取った自賠責の保険金を含むのかどうかなどが争点になったものです。ちなみに,このケースでは保険金は口座に振り込まれており,この口座から妻がお金を引き出して持ち出したお金に関しても問題とはされています。このケースついて,以下では財産分与の問題についてのみ触れたいと思われます。

 前回紹介した裁判例からすると,損害の中身によって財産分与の対象になるかどうかは変わってくることになろうかと思われます。しかし,この判決の判断では全てが財産分与の対象になるとしています。その理由として,夫婦の生活の資になるべきものとし書かれていませんが,この理屈からすると前回の裁判例の判断と矛盾するようにも見えます。

 ただし,前回紹介した裁判例で問題となったのは任意保険(保険会社から支払われたもの)ですが,今回問題になったのは自賠責保険ということで保険の性質の違いは存在します。とはいえ,自賠責保険であっても,今回紹介するケースでは後遺症が残存するようであり,項目ごとの損害の補てんをしているという点では任意保険と違いはないようには思われます。

 今回紹介した裁判例と前回紹介した裁判例は必ずしも整合しない点があるように思われますが,交通事故の被害者救済という一種の社会保障的な自賠責保険の性質がどこまで考慮されての判断かが問題になるところです。こうした点が財産分与を巡る保険金の問題に反映されるかもしれません。

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