法律のいろは

内定と取消について(その③)

2015年4月4日 更新 

 前回は,内定の取消についての一般的な裁判例の考え方などを紹介しました。今回は,履歴書など就職試験の際の応募書類に記載していなかったことが後で明らかになった場合や虚偽の記載をしていた場合に取消事由になるかについて触れたいと思います。

 関連して,こうした虚偽の記載などが解雇事由になるかどうかの問題がありますので,あわせて触れていきます。結論から言えば,虚偽の記載があったからという事で解雇や内定の取消ができるわけではありません。あくまでも,雇用関係の存続を困難にする程に信頼関係を失わせるほどの事項についての虚偽記載などがないと解雇や内定の取消はできないものといえるものです。
 一般に虚偽の記載をしたことは懲戒処分の対象になりうるものですが,裁判例では,雇用関係は従業員と会社側の双方の信頼関係に基づき継続していく関係であることを理由に,こうしたことに関係ある事項の報告を会社は採用段階で就職希望者に求めることができると述べています。そこから,報告を求めた事項から,こうした信頼関係を破るもの,具体的にはそうした記載がなければ採用しなかった(職種や給料等を含めて)ような者であれば,会社の労務管理を混乱させる重大な非違行為として解雇がありうるものとなってきます。当然内定の取消も正当化されることになります。

 古い裁判例ではいわゆる学歴(多くは過大申告)がこうした事由にあたるかが問題になってきました。高卒,大卒,中卒かによって給与等に影響が出ることもありますので,重大な非違行為にあたる可能性は十分にあります。もちろん,こうした場合に無理に懲戒解雇にする必要はなく普通解雇等の形をとることもありうるところです。同様に,職歴についても問題となるところです。中途採用においては,募集職種での採否に大きく影響するところと考えられますので,こうした点に虚偽の記載がある(特に職務能力に大きな影響を与える場合)には重大な非違行為にあたる可能性は大きくなります。もっとも,この場合も無理に懲戒解雇の形をとらなければいけないわけではありません。

 
 これ以外の事由のうち,履歴書などに記載する重要事項は少ないと思われますが,会社側は就職希望者に報告を求めることができるのでしょうか?この点については次回に触れたいと思います。

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