法律のいろは

一度かいた遺言をかえることはできるのでしょうか?

2015年5月18日 更新 

 自分で書いたものであれ,公証人の方にお願いしたものであれ,一度作成した遺言は変更することはできるのでしょうか?結論から言えば,遺言をされた方が亡くなるまでは,遺言の変更をすることはできます。新しく書き換える場合は当然として,遺言を変更したものと法律上扱われる場合にはどのようなものがあるのでしょうか?

 まず,遺言で決めた事柄と矛盾する事柄を行った場合には,変更として扱われます。たとえば,遺言で相続させるあるいは譲る予定であった土地を生前に寄付するような行為が該当します。また,他の方に貸していたお金を対象にしていた場合に,返済を受けた上でそのお金を使ったような場合も該当します。ちなみに,こうした事柄は遺言をされた方自身が行う必要があり,たとえば,遺言をした方に後に成年後見人がついた場合で,その方がこうしたことを行っても,遺言を変更したものとしては法律上は扱われません。もっとも,そうすることで遺言で決めた事柄を実行することが出来なくなる場合はありうるところです。

 次に新しく書き換えたとして扱われる場合,つまり遺言の内容を変更したものと扱われるには,遺言の内容をどう変更した場合が当たるのでしょうか?これは,一言で言えば,後に作られた遺言の内容を実行しようと思えば,目に作られた遺言の内容を実現できない場合が当たります。たとえば,自宅の土地建物について,前に作った遺言ではAさんに相続させると書いていたにもかかわらず,後の遺言でBさんに贈与すると書いていた場合があたります。この場合は,同じ自宅の土地建物をAさんの所有とBさんの所有(共有ではない)形にはできませんので,前後に作られた遺言を同時に実現することはできなくなります。そのため,遺言の内容の変更にあたることになります

 

 ただし,矛盾した内容・変更に当たるのかどうかがわからない(解釈が割れる)ということになると後でトラブルになりかねませんし,せっかく遺言をする意味がなくなります。公正証書遺言を変更する際には公証人の方をはじめとした専門家が関わりますから解釈が割れる可能性や真意から離れた文言にならないよう調整をされることが多いかと思われます。これに対して,ご自身で作成される自筆証書遺言の場合には(以前書いたものを忘れている場合を含めて),変更なのかどうかがわからないことも出てくるかもしれません。費用面その他の問題もありますので,公正証書遺言の方が絶対にいいとまでは言えませんが,気になる場合には専門家に相談をしてどうするのがいいのか(ご自身の意図が伝わるのか)を工夫してみるというのも対応の一つです。自筆証書遺言の保管サービスを使う場合には,書いたのを忘れるという可能性は減りますが,変更をする場合にはそちらについて存在を忘れられないようにする対応も必要になります。

 注意が必要なのは,前に遺言を作ったことを忘れて後の遺言を作ったという場合でも,後で作った方の遺言の該当する部分の方が有効(前の遺言はその内容を変えられたことで,変更部分が失効する)という事です。もちろん,先ほどの例のようにはっきりとしているケースばかりではありませんし,はっきりしていないことでそもそも変更なのかどうかが相続人等の間でトラブルになる可能性はあります。また,思った通りの話にはならない可能性も出てきます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。