法律のいろは

遺言を書いても保管が十分でないと起きうる問題はあるのでしょうか?

2015年5月23日 更新 

 遺言の種類には自筆証書遺言や公正証書遺言その他があるというのは,既に触れたところです。最近遺言を書くこと等を進めることはありますが,作成しても保管が遺言をした方しかわからなかった場合はどうなるのでしょうか?

 公正証書遺言では,遺言がなされたかどうかわからないというケースは通常ないものと考えられます。これは,公正証書遺言の場合には,公証人役場で原本が保管されており,検索システムを使えば,作成の有無は知ることができます(ただし,全国どこでも検索できるのは平成に入ってからの作成分のようです)。もっとも,周りの親族が全くそうしたことを知らず,特に遺言執行者もなく,目ぼしいところに保管してあるかどうかも分からないようなケースでは,周りが遺言作成の有無に気付かない事もありうるかもしれません。
 とはいえ,専門職が作成に関与しておれば,そうした遺言の保管を行っている場合もありますし,ある親族が関与していればその方が保管に関わっていることもありますので,めったにない話かと思われます。

 これに対して,自筆証書遺言の場合には,遺言をされた方が周りの親族に話をしておくとか貸金庫に保管しておく等の事柄があれば,遺言の有無や保管場所について,ある程度は周知されていると考えられます。これに対して,遺言をされた方ご本人が周りに特に言うことなく,貸金庫内など割と見つかりにくい場所に遺言書を置いているようなケースでは,せっかく作成した遺言書が見つからず結局法定相続によって遺産分割などを行うことになりかねません。その意味で,遺言書で財産の処分その他の事柄について自らの意思を反映させようと考えるのであれば,保管・実際の相続の際に発見してもらうというのも重要な事柄となってきます。

 これを防ぐ方法として自筆証書遺言保管サービスが存在します。この詳細は別のコラムで触れていますが,自筆証書遺言の保管が不十分な場合には無視した形での遺産分割協議(遺産分割協議ではあくまでも相続人の間の話し合いですから,遺言をした方の意向が反映されるとは限りません)が進められることもありえます。また,保管状況が不十分ということはほかの方が書き加える・そもそも筆跡をまねて遺言書を作成することも可能であるため,そのことを争点としたトラブルが起きる可能性があります。いわゆる偽造をした遺言書かどうか(遺言は偽造であれば当然無効になります。自筆でないためです)が争いとなり,その内容如何によっては裁判での解決がなされる(時間などが相当かかる可能性あり)ことにもなりかねません。

 

 公正証書遺言にはメリットがあり,単純なものなどは自筆証書遺言の方が費用を抑えるメリットも存在します。ただ,費用を抑えたためにトラブルとなっては意味がありませんし,現在は保管サービスもありますので,その活用(有効性が保障されるわけではありません)の意味などを考えつつ,兄が一番いいのかを考えていくことになるでしょう。

 

 

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