法律のいろは

金銭の借り入れをしていた債務者死亡後の債権回収の方法

2015年6月5日 更新 

 お金を貸し付けていた相手が死亡し、相続が発生したものの、相続人に所在不明の人がいる場合・あるいは収入がなく回収が困難な者がいるとき、貸付をした債権者はどのようにすればよいでしょうか。

 上記のようなお金の貸し借りに関する契約(金銭の消費貸借契約)で、お金の借入をしていた者(債務者)が死亡したとき、相続が発生しますが、その際相続人は相続分に応じて債権・債務を引き継ぐことになります。

 そのため、お金を貸した側からすると、相続人の誰かから回収できればよさそうに思えますが、実際のところは相続人の中に所在不明の者がいれば、そもそも連絡のしようがなく、回収が困難です。

 また、相続人のうち収入がない者がいる場合も同様で、結局のところ相続が始まる前よりも、資産状況が悪くなっていることが考えられます。相続開始後に相続放棄をされる可能性も十分にありえます。期間制限にかかるのかどうかという問題がありますが,音信不通であったケースでは,債権者から連絡をすることで相続放棄へとつながることはありえます。期間制限をクリアしない可能性もあります。

 こういった場合、お金を貸し付けた側ができる方法としてどのようなものがあるでしょうか。

 できれば、回収の見込みがありそうな相続人に対して、被相続人の債務をそのまま引き継いでもらう(免責的債務引受といいます)か、あるいは被相続人の債務と二本立ての形で債務を引き受けてもらう(併存的債務引受といいます)のがよいでしょう。

 前者の、免責的債務引受の場合には、もとの債務者の債務をそっくりそのまま引受、もとの債務者は債務を負わなくなることから、もとの債務者の同意を得る必要があります。この場合は元の債務者は死亡し、相続人が相続していることから、他の相続人の同意を得ることになります。ただ、所在不明の者がいるときは同意を取り付けられないため、この方法を用いるのは難しい可能性があります。

 また、仮にこの方法によったときは、債務者が変わるため、保証・第三者が設定した担保物権は、保証人あるいは担保物権を設定した者の同意がないと移転しないとされているので、消滅してしまわないよう注意が必要です。

 後者の、併存的債務引受のときは元の債務者と並んで同じ内容の債務を負うことになるため、もとの債務者の同意なくても、できますが、実際のところは元の債務者の同意(ここでは他の相続人の同意)を得ることが一般です。ただし,相続放棄をしようという相続人がわざわざ債務を負う同意をするのかどうかという問題があります。相続人自身を保証人としておく(ただし,一定のタイプの契約についての保証人については法改正により保証契約をするために公正証書などが必要になることもあります)ことも考えられます。担保が存在し,そこに利害を相続人が持っている場合には同意をしてもらいやすくなります(例えば,自宅に抵当権などを設定している場合など)。

 状況に応じて、確実に債権を回収できるよう、何がしかの手立てをとっておくのが大事です。
 
 

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