法律のいろは

亡くなった方に大きな借金があることが分かったら(その③)

2015年7月4日 更新 

 前回は,問題となる方が亡くなる前あるいは亡くなったころに,借金が多くあることが判明した場合についての話をさせていただきました。今回は,少し具体的なケースについて触れながら,考えてみたいと思います。なお,ケースは全くの仮想の事例です。

 まず,亡くなった方があるアパートを借りており,以前から音信不通であったため,そのまま何もできずに放置されていたようなケースで後になって,相続人となる親族が判明し大家から未払いのお金の請求を受けた場合を考えてみたいと思います。この場合,その方が亡くなったからといって,契約条項があれば別ですが,アパートの賃貸借契約が終了するわけではありません。未払い賃料等様々な未払いのお金は何もしないままでいると相続されることになりかねません。ここでは原状回復義務も相続の対象となります。家賃未払いが係属していると大家側から賃貸借契約解除がなされることになりますが,亡くなった方の死亡後は相続人に通知をすることになります。このあとには原状回復の必要があり,相続人がその義務を負いますが,場合によってはその金額が大きくなりかねません。期間が経過していると,ケースによっては厳守についての損害を含めた損害賠償請求(主には賃貸借益約上果たすべき原状回復を果たさないことへの損害賠償請求)を受ける可能性もあります。

 たとえば,死後2年してから,相続人となる親族に突然お金の請求があった場合,相続の開始自体からは2年は経過していることになります。ただ,気づかないうちに未払いのお金が多額になっている場合には,残された親族にとっては大きな痛手になりかねません。そのため,借金の引き継ぎをしないのが一番の方法になりますが,この場合に相続放棄ができるかは大きな意味を持ってきます。ここで,長年音信不通であれば,問題となった方がいつ頃なくなったのかを知ることは通常ないと思われます。相続の開始は失踪宣告のような場合を除き,その方が亡くなってからになりますから,いつ亡くなったかを知ることなく,相続の開始を知ったとは言いにくくなります。

 こうした場合には,相続放棄の申述手続きを行うことができる可能性は十分にありますので,検討した方がいい(厳密な事情は専門家に相談した方がいいでしょう)と思われます。相続放棄ができる原則3か月という機関のスタートは自分が相続人であることを知ってからとなるので,その方の死亡を知っていない場合にはスタートをしないためです。

 ここで,相続人全員が相続放棄を行った場合に,先ほどの例で大家がお金の回収をしたい場合にはどうすればいいでしょうか?回収を考える場合は,通常その方にある程度の財産もある場合ですが,こうしたケースでは,家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てて,清算を図ることが一つの方法として考えられます。ただし,財産がない場合には回収は難しいので結局は保証人に対して回収を求めることになるでしょう。保証人は原状回復の負担も負いますので,その負担は軽くはありません。民法改正により家賃保証会社以外にこうしたケースで保証人になる場合の保証人になる方の保護が進みました。言い換えれば,大家にとっては家賃保証会社を使う意味が大きくなったように思われます。ここでは詳細は触れませんが,小さなアパートで個人が保証人になっていた場合でかつ借りていた方が亡くなってしばらくして亡くなったケースでは,その相続人の方にとっても,今回述べた相続放棄をするのかなどを考る必要が出てくる場面も考えられます。これは,今回述べたのと同様の問題が生じるからです。

 具体的なケースはほかにも考えられるところですが,都度専門家への相談をするのも一つの方法かもしれません。次回に続きます。

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