法律のいろは

遺産を分割する具体的な方法にはどのようなものがあるでしょうか(現物・代償・換価分割)

2015年7月15日 更新 

 親族がなくなった場合に,その遺産をどのように分けるかの話し合いがなされることもあるかと思われますが,どのように分けるのかは大きく問題になることもあります。分ける以上は,どのような分け方をするのかは大きく問題となるところです。どりだけの取り分があるのかをどう計算していくのかという話も大きな問題としてありますが,今回は,そもそもどんなわけ方があるのかを触れたいと思います。

 遺産分割は,遺産に含まれる財産を分けるという点からは,そのものをズバリ分けていく現物分割という方法が原則の分け方と考えることができます。しかし,たとえば,家業を継ぐ方に現物(土地建物等)を分けたい場合には,その方に現物は渡してお金をもらって清算するという方法も考えられるところです。こうした方法を代償分割といいます。

 ただし,代償分割は 法令上は例外的な分け方と捉えられており,家庭裁判所での遺産分割では,現物分割を行うのが無理である・現物分割をすると,その財産の価値を大きく損なうような場合・その財産を特定の相続人が持っている状況を尊重すべき事情がある場合・相続人の間で,お金で清算をすることに争いがない場合,等それなりの事情がある場合に,こうした方法が採用されています。
 この方法は,その財産をもらう方にお金の支払いができることが前提になっていますから,そうしたお金を支払うことが難しいような場合には,採用されない方法となります。支払いの方法としては,分ける際に支払うのが通常ですが,全員が同意すれば分割で支払っていくという方法も考えられるところです。

 ちなみに,代償分割についても,いったんお金の支払い義務を負担し,対象となる財産を取得し後に売却したお金から支払うということもありえますが,この場合には所得税(譲渡所得に基づくもの)が生じる可能性があります。特に古い不動産では,売却金額から差し引くべき費用はともかく,いくらで購入したのかがわからないケースがあります。この場合には概算の取得費に関する法律の規定で売却額の5%を取得費として差し引くことができます。また,古い時期の購入となると購入金額がかなり低いこともありえます。この取得にかかった金額と売却に関する費用(他に取得にかかった費用)を売却金額から差し引いてプラスが出れば,課税の可能性があります。居住用不動産や相続税の支払いが生じた場合には一部特例はありますが,無視はできません。裁判所の手続きでは当然にこうした課税の話は出てきませんので,こうした分割方法を考える際には課税負担がどうなりそうなのかも考えておいた方がいいでしょう。遺産分割協議の中で反映してもらうように話を進めるということもありうるでしょう。

 このほか,問題となっている財産を誰も欲しがっておらず,お金にしたいような場合,主には不動産などが考えられます,その財産を打ってお金にしたうえで分けて清算するという方法(換価分割)も考えられます。こうした売却の方法も,相続人の間の話し合いに基づいて,業者等に売ってもらうという方法もあれば,裁判所における競売の方法もありうるところです。業者に頼んで売却してもらう場合には金額や者選定ややり取りをだれが行うのか,決済や清算をきちんと行う必要があります。売却の場合には金額とかかる時間が重要になりますが,不動産(実家)においてある荷物の引き取りや処分費用の問題も出てきます。特に,荷物の引き取りについてはどこにあるものを持っていくのか・なくなったものがあるのかどうか・日程設定やご本人が立ち会うのかなど感情面の対立が大きな場合には調整すべきことが多く存在する場合もありえます。調整が多い場合には代理人弁護士が介在しているケースが多いと思われますが,家に昔あったはずの動産(思い出の品等)は必ずしもあるとは限らないこともありえます。通常は探す場所を探したうえで存在するものを持っていくということが多いのではないかと思われます。

 売却の際には,,ここでの所得税の課税の可能性があります。売却金額から,費用と当初購入した費用をひいてプラスならば課税されます。ここでも当初購入費用の資料があるのかどうか・あるならばその費用・なければ概算の取得費が5%であることなどを踏まえて課税負担や費用の負担をどうするのかをきちんと話し合いで決めておいた方がトラブルは小さくなるでしょう。裁判所の判断では考慮されないのが原則です。

 また,こうした清算をすることなく,相続人の間でその財産を,とりあえず共有の形にしておくという方法もありうるところです。ただ,後で別に分けて清算する必要がある点には注意が必要です。

このように,遺産の分け方自体も色々と考えられるところです。

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