法律のいろは
離婚の際に,夫婦で形成した財産は清算の対象となるという話は既に触れました。夫婦のうち,一方の特有財産と言えれば,そうした対象から外れます。夫婦の間で財産の贈与がなされた場合に,それが何の目的でなされたかによって,こうした清算による財産分与の対象に含まれるかどうかが変わってきますので,こうした点が問題になることも考えられるところです。今回は,そうしたケースについて裁判例の紹介をしたいと思います。
問題となったケースは,協議離婚後に財産分与を求めたケースで,離婚前に夫婦間で贈与した不動産が財産分与の対象になるのかが問題になったものです。この不動産が,そもそも結婚期間中に取得された夫婦共有の財産に属した点はそこまで問題になってはいません。問題は,こうした取得したその不動産が夫婦間で贈与されていますが,その目的が何であったかというものです。
このケースでは,第1審と第2審では結論が異なります。第1審では,こうした贈与が結婚して20年経過した夫婦について,住むための不動産を夫婦間で贈与した場合に,税金の控除が通常の110万円の他に最高2000万円まで控除される定めを活用するためになされたものだからということで,夫婦共有財産だから清算の対象に含まれると判断しています(実際のケースではもう少し複雑ですが,少し単純化しています)。ここでは,節税目的の贈与であって,確定的に配偶者のものにするという目的ではなかったことを理由にするものと思われます。
これに対して,第2審では相当以前から贈与をした側が行っていた不貞に関して,贈与を受けた側の不満を抑えるために確定的に贈与をしたのが実情である(財産を贈与した側が動かせないようにもらった側だけのものとする)と判断し,清算による財産分与の対象から外しています。
このように,どのような目的の贈与であったかという事が,確定的に一方の配偶者だけのものとする意味合いであったかに影響すれば,特有財産になったかどうかに関わるため,大きく問題になることがあります。前提として言えるのは,夫婦の間で贈与があった場合に,そう簡単には財産分与の対象から外れるわけではないという点です。裏返すと,常に財産分与の対象になるというわけではないことになりますので,注意が必要です。
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