法律のいろは

「相続させる」という言葉のある遺言がある場合,残りの遺産でどんな影響があるのでしょうか?

2015年7月19日 更新 

 表題のような話は,全ての財産を特定の相続人の方に「相続させる」という遺言がなく,ある特定の財産だけ「相続させる」という遺言がある場合に問題となるものです。遺言には,それなりの数が特定の方に全ての財産を「相続させる」というものが存在しているのではないかと思われますが,全てが全てそうではないと思われますので,今回はこの話を触れたいと思います。

                                                                  具体的なケース(仮想のもの)を考えてみます。遺言をAさんが残したとして,その中で,3000万円の価値のある不動産を相続人の中のBさんに「相続させる」という遺言があったとします。残る遺産は2400万円相当のものがあったとします。相続人が他に5人いた場合に,Bさんは遺言に載っている以外の遺産を貰うことができるのか・他の5人は不動産について何か言えるのかがここでの問題となる点です。

                                                                   ここで問題となるのは,「相続させる」と書かれた内容をどのように考えるかです。「相続させる」という内容の遺言が存在する場合に,それは裁判例上,指定された財産を指定された相続人に相続させる,つまり独占的に与える内容と考えられています。こうした点からは,残った部分は通常通りに分けるという考え方も出てきますし,一部の遺産について独占的に取ったのだから,相続人の間の公平のために残りの遺産については調整が必要という考え方も出てくるところです。

                                                                   一般には後者の考え方が採用されているところです。つまり,先ほどの遺言についての考え方から,「相続させる」と指定された財産は指定された方に独占的に取らせるものの,他の部分についてはその取り分を前提に調整することになります。いわゆる特別受益にあたると考えることになります。細かい計算方法は省略しますが,先ほどの例では,「相続させる」財産も考慮して具体的な取り分を考えますが,それは一人当たり900万円になります。(3000万円+2400万円)÷6というのがその計算式です。そして,Bさんは既に3000万円の価値のある不動産をっもらっていますから,とりすぎになっていますので,これ以上はもらえません。Bさんは2400万円相当の財産からは全くもらえないという形になります

                                                                   先ほどの計算だと,一人当たり900万円のはずなのに,2400万円を5人で均等に割ったのと計算が合わないという事になりますが,これは3000万円の不動産から貰えない部分が生じるためで,不動産部分を独占的にB③にとれるようにした遺言の影響となります。このように,こうした遺言が存在すると,公平な調整をするものの,遺言の意味の解釈との兼ね合いでこうした処理になってきます。

 

 他に,負債の方の相続分を指定するということもあります。負債については法定相続分での引継ぎが遺産分割の話し合いをすることなく当然に分けられます。これとは別個の指定をすることは可能ですが,その際には遺言の解釈でもめないような記載が必要です。また,遺言をされる方の債権者には遺言の内容を知らないケースでは,遺言の内容通りの配分を相続人の方などが主張できないですので,後で相続人の間で負債の負担の通り調整するという手間が生じかねません。こうした点をどうするのかといった話も重要になってきます。

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