法律のいろは

亡くなった方に大きな借金があることが分かったら(その⑤)

2015年7月21日 更新 

 前回まで,亡くなった方の死亡からすぐの時期までに大きな借金があったようなケースについて触れてきました。この場合に相続放棄ができることに問題はありません。今回は,亡くなった方と生前付き合いがなかった・死亡して数年して大きな借金があることが分かったケースについて触れていきます。

 ここで借金を負担したくないというのであれば,相続放棄という方法が一つの大きな選択肢として出てきます。問題は,相続放棄を実際に行えるか,相続放棄を行える期間内といえるかどうかという点です。前回も触れましたように,相続放棄は法律上「自己のために相続が始まったことを知ってから3か月以内」とされています。ここで問題となるのは,「自己のために相続が始まったことを知って」とは,何を知ることが当てはまるのかという点です。

 裁判例上,何を知ることが当てはまるのかという点については,
 ア 相続開始の原因となった事実
 イ 自分が相続人となったこと
 が要求されています。

 ここでいるアには,亡くなった方の死亡や失踪宣告等相続が始まったと評価される事柄が当てはまります。イには,亡くなった方に配偶者や子供がいる場合には,亡くなった方の兄弟は相続人にはならない等の事情もありますので,亡くなった方の死亡によって当然に知ったという事にはなりません。先ほど触れた兄弟のケースであれば,配偶者と子供がいないのであれば,亡くなった話を知っていればスタートをすることになります。配偶者と子供がいる場合には,その方たちが相続放棄をしたことまで知らないと相続人になったことを知ったとは言えません,その方たちの相続放棄の手続きによって相続人となることになりますから(亡くなった方の親が既に死亡しているケース),そうしたことを知っていることがイの事情を知っていることになります。お互いに疎遠なケースでは,配偶者や子供の相続放棄を含めて相当期間知らない(債権者からのお金の請求をもって初めて知った)ということもありうるでしょう。

 このような前提からすると,亡くなった方と生前付き合いがない親族(相続人に法律上あたる範囲の方)が,先ほどのアあるいはイの事柄を実際の相続開始からそれなりに時間が経過しても,知らないという事はありえます。こうした場合に充てれば,少し時間が経過していても相続放棄が可能となるケースがあります。

 これに対して,亡くなった方の死亡や自分が相続人であることは知っていても,大きな借金の存在は知らなかったという場合には,相続放棄ができないのではないかという点が問題になるところです。この問題については裁判例が存在し,次回に詳しく触れますが,相続財産がないと信じ・これまでの交際状況その他から見てそう信じるだけの事情や相続財産の調査をするのが困難であるだけの事情が要求され,ケースごとの事情によって判断をされることになります。。

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