法律のいろは

孫を養子にした場合に,相続に何か影響があるのでしょうか(税金と法律面・遺留分対策になるか)?

2015年7月26日 更新 

 通常孫は,亡くなった方の相続人には当然にはなりません。孫の親である子供が亡くなった方の死亡以前に死亡した等の事情があれば,相続人になりますが,これは「代襲相続」と呼ばれるものになります。後継ぎ等様々な事情で,孫を亡くなった方(ここでは祖父母を前提とします)の養子にした場合に何か相続について影響が出るのでしょうか?

 養子についても,法律上は亡くなった方と親子関係が生じますので,法律上の子供が相続人(第1順位)となっていることから,孫でかつ養子になった方については,当然に相続人になります。それでは,孫の親が既に亡くなった場合には,先ほどの代襲相続というのも生じるために,取り分が多くなるのか等が問題になってきます。

 

 この場合,養子にとっての実の親が受け取った分は結局その相続人である孫がまた相続をするものに将来なりうるものです。また,養子の相続を否定する理由は特にないところです。こうしたこともあって,こうした場合に,養子となった孫は,養子としての相続分と養子の実の親である子供の相続分を取得することになります。

 ただし,特別受益と呼ばれる生前贈与に当てはまるかどうかについては注意が必要です。相続人に関する生前贈与は原則相続開始前10年以内のもので,特別受益に当たるものが考慮対象になります。そして,特別受益とは生計の資のための贈与を相続人に対して行った場合に,遺産分割の場面で公平のために調整をする制度ですが,孫は基本的には相続人にはなりません。相続開始前に,孫の親である子供が亡くなったことで相続人になる場合(代襲相続と呼ばれるもの)・養子縁組後に相続人になる場合に考慮されることになります。つまり,養子縁組前は原則として孫に対する生前贈与は特別受益にはなりません。例外は,代襲相続をすることになる場合のほかに,孫に対する生前贈与がその親である子に対して利益を与えたといえる場合(その子供に対する特別受益として考慮されます)です。  

 遺留分については,養子縁組前の生前贈与は,相続人以外に対する贈与(相続開始前1年以内のものが原則)・養子縁組後は相続人に対する贈与として考えるのが基本になるでしょう。これに対して,養子縁組前になされた贈与については別に考える見解もあるようです。それによると,遺留分の侵害の考慮対象になるだけではなく,相続開始前の期間を問わない(特別受益の対象と評価できる限りは期間の制限はないとする)との見解です。先ほどの話との違いは,相続開始前1年を原則とするのではなく,特別受益に該当すると評価できればずっと遡れるとする点です。遺産分割における特別受益については時期を関係なく坂のびり考慮の対象になることと同様に考える点を理由とするようです。筆者が見る限りでは参考となる裁判例はありませんが,生前対策の際にはリスク面も考慮に入れた方がいいのかもしれません。

 ちなみに,遺留分を減らすために孫などを養子縁組して,法律上の子供を増やす養子縁組はその効力が否定される(無効)になる可能性があります。これは,遺留分率は,基本となる遺留分に法定相続分率をかけたものが一人当たりの遺留分の比率となるので,法律上の子供が増えれば一人当たりの遺留分率は下がります。これを狙って実際には親子関係を築く意思がないと評価される場合(ケースごとの事情によります)には縁組意思がないものとして無効と判断をした裁判例があります。  

 これとは別に相続税の面から見ても,養子を増やすことで基礎控除部分を増やす(子供が増えれば一人当たり600万円増えるのではないかという気が計算式上はしてくるところです)ことには規制がかけられています。つまり,限界がありできません。また,孫を養子縁組する場合には,代襲相続の場合と異なり,相続税が課税される場合には20%加算される対象に含まれます。

 

 具体例を用いて確認してみましょう。祖父母のうち,祖父Bさんは既に亡くなっていて,祖母Aさんの相続を考えてみます。祖母Aさんには,実の子供としてCさんとDさんがいます。また,諸般の事情から,Cさんの子供(一人だけと仮定します)であるEさんはAさんの養子になっています。Cさんは養子縁組の後に,亡くなった状況でAさんが亡くなったというケースを考えてみます。Cさん・Dさん・Eさんは,本来なら,子供としてそれぞれ相続分は法律上1/3ずつとなります(ここでは修正する要素は考えません)。Eさんは,Cさんが既に死亡しているために,Cさんの相続分を取得するとともに養子としての相続分も持つことになります。そのため,Eさんは,2/3の相続分を持つことになってきます。

 このように,二つの立場による相続分を持つ場合は,それぞれ取得することになります。

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