法律のいろは

亡くなった方の遺言を見つけてうっかり開封してしまった場合,どんな問題がありうるのでしょうか?

2015年8月12日 更新 

 公正証書遺言と異なり,自筆証書遺言の場合には,亡くなった方の手元や預け先以外には特に保管されていません。遺言をした方が亡くなった後に,存在を気づかれないこともあるかもしれませんし,見つかっても遺言とは気づかずにうっかり開封してしまうかもしれません。うっかり開封してしまった場合に,何か問題はあるのでしょうか?

 自筆証書遺言(遺言をする方が自ら遺言を書いたもの)は法律上,家庭裁判所での検認という手続きが要求されています。以前触れましたが,検認という手続き時点での遺言書の内容や形状などを明らかにし偽造などを防ごうという手続きで,遺言の有効性などを保障するものではありません。検認の際に,通常遺言書の開封も行われることになりますが,うっかり開封がなされた場合にはそのまま遺言の内容の実現が行われることもあるのではないかと思われます。この場合には検認がなされないことになりますが,その場合にどんな問題が起きるのだろうというのがここでの問題です。

 一番面倒なのが,検認を行わずに行われた事柄が法律上無効と扱われ,全く無意味な事柄になることかと思われます。しかし,検認手続きを行うことなくなされた遺言内容の実現(遺言執行)が法律上無効と扱われることはありません。そのため,全てやり直しなどの面倒なことは避けることはできます。しかし,家庭裁判所で行うべき検認で開封すべき自筆賞与遺言を開封した場合のペナルテイ自体はあります。法律上,そうしたペナルテイの内容としては,5万円以下の過料に処せられると定められています。検認手続きで開封が行われるのは「封印された遺言書」について,法律上は相続人や利害関係人の立会いの下で行うことが定められていますので,開封が何かしらの遺言の効力への影響は自筆証書遺言ではありません。自筆証書遺言の有効性に封印自体の有無は関係はありません。

 ただし,一度封をされたものが開封された形跡がある場合には,遺言をした方か他の誰かが中を見て何かをしたという疑い(偽造等を疑われる)可能性があります。また,自筆証書遺言保管サービスを使う場合には,そもそも封印のある遺言では使うことが無理です(こちらは検認不要)。

 これに対して,秘密証書遺言という遺言の形の場合には封印が必要になりますから,封印がないという話は有効性に関わります。検認の手続きは公正証書遺言以外で要求されていますので(自筆証書遺言で保管サービスを使った場合は別),この形式の遺言でも必要になります。

 

 どの形態の遺言をするのがいいのかという点(保管を含む)は,そもそも発見されないかもしれない点や遺言は書き方などの決まりのとおりでないと無効と扱われるリスクとその手軽さをよく考えた上で,遺言を書くのであればそのやり方をよく考える必要があるように思われます。

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