法律のいろは

相続放棄の際の落とし穴に注意しましょう

2016年1月19日 更新 

 親族が亡くなり,その方の負債が大きい場合等に相続人が相続をしないようにする手段として,相続放棄の手続きがあります、既に触れましたが,家庭裁判所への手続きが必要になります。

 特に親や配偶者が亡くなった場合には,葬式その他の事で亡くなった方のお金を使うことがあるかもしれません、その際に,相続放棄の効果が失われてしまう,相続をした扱いになる可能性があります。もちろん,相続放棄の期間制限を超えてしまうことも落とし穴ですが,今回は前者について触れてみたいと思います。

 結論から言えば,葬式や簡単な形見分けはともかく,勝手に自分の口座へお金を移す・登記等の名義を自分のものにする・亡くなった方の財産を勝手に処分するという事を避けること,負債が多いならば早めに相続放棄の手続きを取ることで落とし穴を避けることができます。

 法律上,相続放棄の手続きをした後であっても,一定の事柄を行った場合には,相続をしたという扱いに法律上なってしまいます。相続放棄の意味がなくなるという話ですね。一定の事柄には,亡くなった方の財産を使う・処分する・わざと隠すような場合です。

 この場合でも,亡くなった方と一緒に住んでいた家を修理する必要があって修理をした場合や葬式の費用を出した場合,墓石の購入をした,一般的な範囲で形見分けを行った場合は別です。こうした場合は法律上,裁判例などで相続放棄の意味が失われるケースに該当しないと考えられています。もっとも,高価な品の形見分けは,このようには言えませんので,注意が必要です。

 先ほど述べた事柄は,配信的な行為と考えられているために,法律上ペナルテイが加えられるという扱いになっています。親族の間だから問題ないのではないかという意識はついつい働きがちです。葬式などの必要から預貯金からお金を出す(口座が凍結されているのが通常ですが,万一引き出せた場合)事が出来ても,以前から債務の問題があったようなケースでは注意が必要です。  このほか,相続税の課税がなされる場合もありうるので注意が必要です。これは,生命保険など相続税法上「みなし相続財産」(公平の観点などから見て本来相続財産でないものも相続財産として扱い,相続税の課税対象として扱われる財産)となるためです。亡くなった方が契約者で保険料を負担し,自らを被保険者とする大きな保険金額の生命保険を受け取る場合には課税が生じる可能性もあります。尾の場合には相続放棄をした方も相続人の一人として基礎控除(ここを超えると課税が発生する,ただし配偶者については配偶者の税額軽減がありますので多くは課税にはならないでしょう)を考えることになります。

 税務の関係での注意点を触れますと,相続放棄をするかどうかを決める家庭裁判所への申立期間(申述期間)は申し立てにより伸ばすことはできます。これに対して,相続税の課税をされる場合の申告期限(相続が開始しているのを知ってから10か月以内)は変わりません。性質が異なるためですが,実は相続税を課税されるという場合には放っておくことで延滞に対するペナルテイもありますから,注意は必要です。

 このように,相続放棄にも落とし穴がありますので,相続放棄の手続きを考えている場合には,はまらないようにしましょう。
 

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