法律のいろは

相続の際に,遺留分侵害(減殺)請求とはいつまでできるのでしょうか?

2016年1月24日 更新 

 親が亡くなった後に,特定の方に財産を渡していた・遺言で全財産を渡すと書かれていた場合に,遺言の効力等を争うのでなければ,遺留分減殺請求権の行使(令和元年7月以降権利の性質などが一部変更となり,遺留分侵害請求となっています)を考えることになります。これはいつまでも行うことができるものなのでしょうか?

 結論から言えば,そうはなりません。遺留分侵害(減殺)請求を行うことができる期間の制限は法律上定められています。これは遺留分侵害請求になってからも変わってはいません。

 1 相続の開始+遺留分を侵害する贈与等の存在を知ってから1年

 2 相続の開始から10年

 とされています。このうち,相続の開始とは,先ほどの例でいえば,親が亡くなったこと,になります。1にある,遺留分を侵害する贈与などの存在を知った時,とは次のように考えられています。問題となっている贈与(たとえば,全財産を譲るという話)や遺言での遺贈(たとえば,全財産を○○に相続させる)の存在を知ることは当然含まれています。ただし,これだけでは遺留分を侵害しているのかどうかは分かりません。そのため,遺留分を侵害していることまで,遺留分侵害(減殺)請求をしようとする側が知っていたことが必要となるのです。

 これらの話は,遺留分侵害(減殺)請求を行使された相手側(先ほどの例だともらった側)が立証する必要のある事柄になります。相手方の認識にあたる事情であるために,知っていた事柄を裏付ける事柄(客観的な証拠,知っていることを前提とした話し合いの記録等)が必要となるところです。遺言であれば,遺言書を確認した時期(49日などが考えられます)し,生前贈与については生前対策で明確化していたのであれば,死亡時(相続開始時)となります。そうでなければ,やはり話し合いをした時期になります。

 遺留分については法改正により権利行使が侵害したお金の支払いを求める権利に変更になり,特に対象となる生前贈与の範囲の一部変更その他の変更がなされています。何かしらの権利行使(侵害の事実とお金の支払いを求めること,通常は暫定でも計算をしたお金の金額も書かれているかと思われます)がなされていれば,通知でも足ります(証拠で残す関係上内容証明郵便であるケースが多いでしょう)が,法律上到達したと評価できる必要があります。

 

 これに対し,2にある相続の開始という事実は,除籍謄本など比較的簡単に明らかにできる事柄となります。それでは,相続から10年経過していても,1に満たす事柄を知らなかったということで,遺留分減殺請求ができるのでしょうか?

 この点はできないというのが結論です。仮に,できるとすると,1と2のどちらかが過ぎると期間制限に引っかかると法律で定めた意味がなくなります。特に,2の期間は法律上除斥期間と呼ばれるものになります。これは,権利関係を早く確定させるため等の理由から,一定の期間が過ぎると権利行使をできないようにしようとする制度になります。そのため,相続開始から10年が経過すると遺留分減殺請求はできなくなると考えた方がいいでしょう。

 

 ただし,一度遺留分減殺請求権を行使すればこういった期間制限の問題はなくなるというのが改正前の話でしたが,お金での清算を求める権利となった法改正後は支払いを求めるお金の請求権自体も別に時効にかかります。

 これは,遺留分侵害請求権の行使によって求めるお金の支払い請求権が,支払期限を特に定めない権利となっていて,この権利は具体的な金額を示してお金の支払いを求めた時点から時効期間がスタートします。それとともに,この時点から遅延損害金(法定利率によるもの)も支払う必要が出てくるのが原則です。そして,時効期間は令和2年4月以降に遺留分侵害請求を具体的な金額を示して行った場合には,そこから5年間(令和元年7月から令和2年3月までに行った場合には,その時点から10年間)となります。アンバランスですが,時効に関しても法改正が行われていて,その施行時期が令和2年4月からであった関係もあっての話になります。

 遺留分侵害請求をしておきながら,その後のお金の請求をしないままに置いておくということはないでしょうけれども,お金の支払いに関する話し合いなどに時間がかかっている場合には,お金の支払いを求める権利自体の時効にかかる可能性があります(これを避けるには裁判所での手続きにのせる必要があります)。

 

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