法律のいろは

特定の相続人を,自分の相続についての相続人から外すことはできるのでしょうか(相続欠格と相続排除とは)?

2016年1月28日 更新 

 遺言で贈与(遺贈)等しない限りは,法律で定められた親族が相続をします。こうした法定相続人と呼ばれる方でも,相続人から外されてしまう制度があるかどうかという点を触れてみたいと思います。

 こうした制度自体は2つあります。一つ目は,法律の定める一定の事柄に該当するために,当然に法律上相続人の資格が奪われるものです。相続欠格と呼ばれるものです。二つ目は,相続が将来発生する方の意向で,これまでの経緯から見て,相続させるのをはばかられる方(遺留分を有する方に限る)を相続人から外すという制度になります。相続排除と呼ばれるものです。二つ目の制度は,遺言あるいは生前の請求で,家庭裁判所が外すかどうか判断するもので,完全に意向だけで外せるものではない点には注意が必要です。

 このうち,一つ目の制度を今回触れたいと思います。この制度に該当する場合はそれほどないと思われますが,法律上当然に資格が奪われるだけあって,該当する場合は大きく問題が生じるものです。次のものが該当します。

 ・故意に,被相続人・自分より優先するか同位の相続人を殺害,殺害しようとして刑に処せられた場合
 ・被相続人が殺害されたことを知りつつ,告訴等しなかった場合(一応例外もあります)
 ・詐欺や強迫で遺言をさせた,遺言の変更や撤回を妨げた場合
 ・詐欺や強迫によって,遺言を変更・撤回させた場合
 ・遺言書を勝手に作る,内容を勝手にかえる,遺言書を捨てる・無効にする等の行為,
  遺言書を見つけにくくする

 このような事柄があった場合に,問題となっている被相続人に関して,相続人の立場を法律上当然に奪われます。特に,遺言書をどこかに隠したのではないかという疑いが出てきた場合には,上記の五つ目にあたるのではないかは問題となりえます。

 これに関しては,裁判例が存在し,問題となっている相続について,不当な利益を得る目的で隠したような場合を指すと述べています。これは,遺言について,著しく不当な干渉をした方への制裁として相続人資格を奪うという制度が相続欠格だからという理由です。

 このことによって,該当しなくなる場合は,単に自筆の遺言を保管していたものをうっかり無くした場合等が考えられるところです。  これに対して,二つ目の制度は被相続人の意思に加えて家庭裁判所の判断によって相続人から外すという制度です。法律上は  ・被相続人に対する虐待や重大な侮辱をいた  ・著しい非行がその方にある  場合が挙げられています。信頼関係を破壊する言動があったといえる場合ですので,ここで上げられた言動も一般的に見てそのように言えるものである必要があります。言い換えると,被相続人の気持ちだけでできるものではないという点・被相続人からその方の言動を起こすように仕向けたと評価できる場合は含まれない点が重要です。  被相続人の生前にはその方が・遺言で行う場合には遺言執行者が家庭裁判所に申し立てて,裁判所が排除を認めるという判断をすれば,はじめてその方を相続人から外すことができます。裁判所は,申し立てられた相続人の方の言動内容(反省状況を含む)や被相続人自身が許したのかなどを考慮して,判断をすることになります。相続人から外されますので,この方を苦あえて遺産分割協議をした場合にはその協議は無効となります。  ここで相続人から外された場合でも,外された相続人に子供がいれば,代襲相続といってその子供自身が相続人となります。相続欠格や相続排除については,あくまでも相続人から外すのは被相続人ごとの話になりますので,父の相続について相続排除をされても母の相続については相続人ではあります。

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