法律のいろは

認知症と介護者の責任について(監督者の責任の範囲)の裁判例(その①)

2016年3月2日 更新 

 昨日,認知症を患った方が電車の線路内に立ち入って電車と事故を起こしてなくなった件に関する遺族への賠償請求に関する最高裁の判断が下されました。この裁判例では,判断能力が低下した方に関して,賠償責任をおう「監督義務者」の範囲が大きく問題になったものと思われます。第1審,第2審,最高裁でそれぞれ考え方に変化が出てきた点が大きい点に加え,成年後見人等の責任に関しても判断をしており,地域で高齢者を見る・在宅介護の流れのある中では,大きな裁判例と思われます。

 簡略化していうと,問題となったケースは判決文からは,次のようなものになります。事故の起きる数年前から認知症にり患した方が事故を起こしてなくなった際に,「監督義務者」とは何かが問題となっています。亡くなる1~2年ほど前にはいわる徘徊が見られた(線路に立ち入ったことはない)・亡くなった年には要介護4の認定を受け,その妻や息子の妻がお金の管理や世話などをしていたというものです。重要なことは息子の方が決めていました。亡くなった方は,成年後見の手続きはとられておらず,デイサービスに通っていたようです。

 電車の運行会社は,その遺族に対し,監督義務者であることを理由に事故で被ったという損害賠償を請求したものです。法律上,責任をおうことができないとされる方が事故等を起こした場合に,監督義務者が賠償責任を負うと規定されています。また,裁判例上,監督義務者でなくても,様々な事情から監督義務を引き受けたと考えられる場合には,監督義務者と同様な責任を負うと判断されています。

 そのため,こうした監督義務者にあたるかどうか・監督義務を引き受けたと評価できるかどうかが大きな争点となったと言えるでしょう。ちなみに,監督義務を尽くしていると言えれば,こうした責任を負うであっても免責されます。最高裁の裁判官の意見の中にも触れられています。

 こういったケースで,第1審では,息子と妻が監督義務を負うという事で,電車の運行会社からの賠償請求を認めています。長男が監督義務者であること・妻は監督義務者ではないけれども,様々な事情から監督義務を負うというのがその理由です。

 これに対し,第2審では,息子に対する賠償請求は認めなかったものの,妻に対する賠償請求を認めています。息子を監督義務者ではないとしている一方,妻は監督義務者にあたると判断しています。

 最高裁の判断では,二人とも監督義務者ではない・監督義務を引き受けていないと判断されています。詳細は次回に続きます。

 

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