2016年3月3日 更新
お金(債権)の回収問題、不動産の法律問題、子ども、熟年離婚、男性から見た離婚問題、相続関連、遺産分割、遺言、離婚問題、高齢者の法律問題
先日出た最高裁の判断について,前回は簡単に問題となったケースの概要と第1審と第2審の判断に関して触れました。今回は,最高裁の判断の内容について触れていきます。
既に相当報道されていますが,最高裁の判断では,結論として第2審でも責任を負うとされた亡くなった妻が監督義務者ではない・監督義務者とも同視できる事情はないとして,責任を否定しています。責任を負うことがないと損害賠償請求は認められません。
前提として,昨日も触れましたように,亡くなった方は成年後見が開始されていませんでした。第2審は,法律上の精神障害者に関して定めらた保護者の立場にある方について,同居している配偶者は原則として監督義務を負うという判断に基づき,妻の責任を認めています。
これに対し,最高裁は,
・法律上の精神障害者に関する保護者には,平成11年の法律改正後には,精神障害者の自分や他人に危害を加える行動の防止義務が廃止されたこと
・夫婦で同居しても,夫婦の間で協力を負う義務があるだけで,第3者に対する義務を定めていない。
ことから,仮に精神障害者の保護者にあたっても直ちに監督義務者とは言えない・夫婦で同居していても,第3者のための監督義務の根拠には ならない,ことをあげて,監督義務者にはあたらないと判断しています。
裏返せば,他人に迷惑をかける行動の防止義務が法律上義務付けられていれば,監督義務者にあたる可能性が高くなるという事と思われます。配偶者であれば,精神障害者の保護者になりえますが,義務が廃止された現在(事故時点も)では,この事が監督義務の根拠には直ちにならないというものです。
成年後見人の責任についても判断では触れられています。成年後見人も,平成11年の法律改正前は,療養監護する義務が定められていましたが,現在は本人の心身や生活状況に配慮する義務とされていて,現実に介護や監督する者とは考えられていません。このことから,成年後見人であっても,直ちに第3者のために本院を監督する義務があるとは言えないと判断しています。
この点は,親族の方で同居はしていないけれども後見人になっているといく場合には,大きな意味を持つ者と思われます。専門職が後見人になる場合もありますが,多くは親族の方が後見人になっています。
判断では,そのうえで,監督義務者ではないけれども,様々な事情から監督義務を引き受けたと考えられる場合の考慮要素をあげて,妻に該当するかどうか判断しています。この点は次回に続きます。
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