法律のいろは

子供の起こした事故等と親の賠償責任(その③)

2016年4月18日 更新 

 前回は,子供が起こした事故に関する親の監督責任について,結論として否定した裁判例の概要と第1審と第2審の判断の概略(一部)を触れました。今回は,その続きです。                                                                     前回も触れましたように,第1審・第2審共に,親の監督責任を認めました。これに対し,最高裁の判断では,子供の監督責任を親が尽くしたとして,親の損害賠償責任自体をこのケースでは否定しています。そのポイントはどういった点にあるのでしょうか?                                                                     問題となったケースでは,親が直接子供の様子を見ていたとか監督していたというものではなく,学校で起きた事故である点への注意が必要です。こうした場合には,親の子供への監督はある程度一般的なものにならざるを得ません。子供に対して,一般的にみて危険性があるような事柄をしないように注意するのは当然であるとしても,そこまでではない事柄=ふつう危険性がないことから偶然生じた事故まで起きないように監督することは普通は難しいです。                                                                     最高裁の判断でも,こうした点を考慮しています。親が直接監視していない状況での事故については,通常危険性のない事柄についてまで事故を起こさないように監督しなくても一般的なしつけを尽くしていれば,原則として監督責任を尽くしたと言えると判断しています。ここでの例外は,通常危険性がないと言っても事故が起こることが予測できる事情があった場合が該当します。前提として,子供が加害者として責任を負うこと・子供が自分の行為に責任を負うだけの能力が存在しないことが必要です。                                                                     問題となったケースでは,親が子供に対して,一般的にみて危険な遊び等をしないようにしつけていたこと・校庭でサッカーボールをゴールに向けて蹴る行為が一般には危険とは言えないこと等が言えます。ゴールへ向けてサッカーボールを蹴る行為が全て一般に危険性がないというわけではありません。あくまでも状況から見て,ゴールへ向けて蹴ったバールが普通は事故の起きた道路上に飛び出るとは考えにくい状況が必要となります。                                                                     当然,わざと人を狙ってゴールを外したとか・道路へ向けて蹴った言える場合は話が変わってくるでしょう。以上述べた点からしても,学校で起きた事故も危険が起きない状況(回避された状況)であったのかも大きなポイントになるかもしれません。また,親が直接子供の引率をしていて監督していた場合には,この裁判例で述べられた点よりも監督義務の程度は大きくなる可能性があります。
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