法律のいろは

遺留分減殺請求と遺産分割協議の関係(その②)

2016年5月14日 更新 

 遺留分侵害(減殺)請求と遺産分割は性質的には異なる手続きであるため,一方の手続きを求めることに他方の意思が含まれているとは当然には言えないという点を前回触れました。そのうえで,やや特殊なケースになりますが,遺産分割の申し入れに遺留分減殺請求の意味合いが含まれるのか・遺留分減殺請求の通知が届いた扱いになるのかという点が問題になった最高裁の判断についても前回ある程度触れました。今回はその続きです。

 

 前回触れた最高裁判断の事例では,補足すると特に遺言が無効であると争ってはいないケースでした。このケースでは遺言により相続分がゼロとされた方が,遺留分を侵害していることを理由とした遺留分減殺請求の通知は受け取られず戻ってきたケースですので,通知が届いたという法律上の扱いができるか(できるのであれば,遺留分侵害請求の下ではお金の支払請求はすでになされており,改正前の遺留分減殺請求では遺贈の効力が一部否定されるなどの効果が当然に生じます)・できないなら遺産分割の申し入れに遺留分減殺請求が含まれていないと,話し合いがつかない場合に取り分ゼロが確定するため,大きな影響を与えます。

 

 最高裁まで争われたケースですが,第2審では現実に受け取っていない以上はその内容を知ることができたとは言えないという事で,前回の②について通知は法律上届いたという扱いはできないと判断しています。また,前回の①である遺産分割の申し入れに遺留分減殺が含まれるかどうかという点も含まれないと判断しています。この判断では後で遺留分減殺請求を行っても期間が過ぎ去ったということになります。

 

 これに対して,最高裁はいずれの点も異なる判断をしています。まず,現実に受け取っていなくても法律上届いたという扱いができるかという点をできると判断しています。既に通知を現実に知らなくても知ることができる状態であればいいという最高裁の判断をベースにしています。このケースでは,相手方(弁護士を通じて)から内容証明郵便が届いていて,遺産分割の話が書かれているのだろうと受け取った側が不在通知から推測していた・受け取った側が弁護士に法律相談を受け取ったころにして,遺産分割や遺留分減殺請求の説明を受けていたことを判断の要素としています。

 

 つまり,実際に推測していた内容と法律相談等から得た知識などから,遺産分割や遺留分減殺請求の話が受け取ってはない(不在通知は受け取っている)内容証明郵便に書かれたと推測できたと判断しています。そのうえで,郵便物を保管期間内に郵便局に受け取りに行くのが難しいとは言えないことを踏まえて,遺留分減殺請求の書かれた通知を知ることができたと評価できるとしたうえで,法律上実際には受け取らなかった遺留分減殺請求の通知を法律上受け取ったと扱うしています。この意味で,遺留分減殺請求の効果は生じているため,遺産分割協議の申し入れに遺留分減殺請求の意思表示が含まれているのかは結論には影響を与えないことになります。

 

 ただし,あくまでも何でも不在郵便がある形ならば法律上受け取ったことになると言っているわけではなく,通知の中身も分かっていたはずだろうという事情も要求しています。そのため,不在通知があればほかの期間制限が存在する通知でも問題がないという話にはならず,確実に権利行使の郵便であることを簡単に知ることができたといえるだけの事情が必要になりますので,届かないケースではどうなるのかは専門家に相談をした方がいいと思われます。

 

 次回に続きます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。