法律のいろは

子供の将来の教育費などの負担を離婚の際に,財産分与で考慮できるでしょうか?

2016年6月25日 更新 

 離婚の際の財産分与の話というと基本的には,夫婦でこれまで築いてきた財産の清算を意味します。そのため,過去の話をどうするかということになります。これに対して,子供の将来の教育費(学生の間の生活費を含めて)は,離婚後の話になります。経済的な問題であることは間違いありませんが,こうした点の負担を考えてみると,調整のためなどの目的から,財産分与の中で考えていくことも例外的にあり得るのでしょうか?

 

 こうしたことを述べた裁判例も存在します。そのケースでは,夫婦の一方が離婚後も子供の学費などを負担するものの,この部分を財産分与の中で考慮してほしいと求めたものです。これに対して,相手方は別途養育費の請求をしてその中で話し合うべきと反論をしています。

 そのため,財産分与の話の中で,こうした離婚後の子供の学費などの負担を考慮できるのかが問題になりました。ちなみに,離婚前の子供の学費などの負担の話も問題になっていますが,この部分は過去の婚姻費用の問題になります。そして,過去の婚姻費用の支払いに関する話は財産分与の中で考慮すること自体は可能です。

 考慮することが可能という話は,イコール全てそのまま考えていくというわけではなく,あくまでも一要素としての考慮である点には注意が必要でしょう。

 

 この裁判例の判断の中では,これまで・今後の夫婦それぞれの子供の学費の負担額を算定(一部統計資料に基づくすいっ系となっています)を行い,多くの負担をする額がいくらになるかを算出しています。そのうえで,その差額の1/2を相手方に支払うべきという考え方をとっています。将来の分担の偏りを考慮しているものと考えられます。

 

 その根拠となる理由,というよりも財産分与の中で今後の子供の学費を考慮しうる理由として,夫婦における経済的な負担の割合に関する話で紛争解決の効率性を考えると,財産分与で考慮しうる「一切の事情」として考えることもできると述べています。

 この理由づけからどこまで一般化できるのかという問題はありますが,相当程度の負担の偏りが存在していると思われるケースです。ちなみに,この裁判例の判断では審判が確定した後の6か月後に支払いをするよう命じており,柔軟な考慮をしているように考えられます。

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