法律のいろは

弁護士に依頼をした場合に,相手の住所等はどこまでの調査が行えるのでしょうか(裁判例の紹介)

2017年2月24日 更新 

 不倫をした相手方の携帯電話番号などから相手方についての住所を調べたい・差し押さえをしたいが,相手あての郵便物がどこかへ転送されているようだけれども,どこかを知りたい等,弁護士に依頼をした際にどこまで依頼した事柄に関する調査を行えるのかは気になるところでしょう。

 

 弁護士には,依頼を受けた案件に関係し,正当なものである限り,所属する弁護士会を通じて,様々なところへ照会をすることができます。わかりにくいですが,照会自体は弁護士会がするもので,個別の弁護士は照会をしてほしいという申し出を行います。もちろん,不当な目的なものは駄目である等どのようなものであっても照会を求められるわけではありません。照会を求めるかどうかは,申し出られた理由などから弁護士会で審査することになります。OKが出たものが弁護士会から紹介されます。

 こうした照会を求めた場合には相手方には正当な理由がない限り回答する義務があると考えられています。

 とはいっても,回答に応じない機関・会社は存在します。その理由は様々あるところですが,今回はそうした回答拒否に対し損害賠償請求などが行われたケースについて触れてみたいと思います。

 

 問題となったケースは,簡単にいえば,差し押さえの準備のために相手の転居先等に関する照会をある会社に行ったものの,回答を拒否されたというものになります。こうした拒否に対して,弁護士会がその会社に対して①拒否に関する損害賠償請求②回答義務があることの確認を求めたものです。

 少し補足すると,差し押さえの準備をしていたのは,その依頼を受けた弁護士です。照会の申し出はその弁護士が所属する弁護士会を通じて行うものですが,照会自体はその所属弁護士会が回答拒否に対して裁判を起こしたものになります。

 

 このケースでは,損害賠償の支払いを命じた第2審の判断(第1審は否定)に対して,その結論をひっくり返したものになります。理由は,次のようなものです。

 損害賠償を認められるには,法律上保護された利益を侵害される必要がある

⇒このケースでは,弁護士会に報告を求めることについて法律上保護された利益が必要

 しかし,照会制度に関して弁護士会にはそうした利益はないから,損害賠償は認められない,というものです。

 

 照会制度は,個別の弁護士が依頼を受けている案件の調査などを行いやすくするための制度で,相手方には正当な理由がない限り報告義務があるという点・弁護士会は適切に運用されるように審査して照会する権限があるだけであるという判断がこの前提にあります。

 

 そのうえで,第2審で報告義務があるかは判断していないため,この点を判断するために高等裁判所で再度判断するようにと命じています。実際にこのケースで報告義務があるのかどうかはまだ最終的に決着していませんが,最終的にどのような判断に至るのかは注目すべきところになるでしょう。

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