法律のいろは

相続させるとの文言のある遺言を作る上での注意点?(その⑤)

2017年1月19日 更新 

 様々な事情から,子供の中の特定の方にすべての財産を渡したいという考えをお持ちの方もいるかもしれません。子供の側がどういう考えかはその方ご自身の事情があると思われます。実際にこうした手段は可能なのでしょうか?

 子供などに特定の財産を「相続させる」との遺言を作成しておけば,遺留分に関するお金での調整はともかく(支払いができない場合には,売却や代物弁済などにより確保できないこともありえます),現在の制度ではクリアできる可能性が高まります。

 

 作成に当たっては,個別に指定していない財産や負債の帰属をめぐり争いが起きないようにしておくことが,ご意向の反映とともにトラブル防止につながります。負債の話は別のコラムで触れていますので,ここでは財産の帰属に関する事柄について補足します。どの財産を・誰に与えるのかを明確にしておけば財産が誰が取得するのかは問題にはなりません。

 主な財産をだれに与えるか決めた後で,残ったものをどうするのかという問題が出てきます。この際に「その他一切の財産は○○に相続させる」との記載が考えられます。財産であればおよそ価値のあるものすべてを含みますが,この「財産」の部分が「動産」「株式」「有価証券」との記載であった場合はどうでしょうか?当初想定していなかった財産が後で見つかった場合には,この文言に含まれるかどうか問題になる可能性はあります。

 田舎の不動産が見つかった場合には,不動産ゆえに動産や株式などには含まれません。売却に難はあるものの,固定資産税などの負担は生じる(保安林では出ませんが)こともあって誰が取得するのかが問題になることもありえます(小尾では積極的イに取得したいというよりは取得を避けたいという思惑が強いかもしれません)。もちろん,価値の大きな不動産である場合(財産調査をきちんとしていれば漏れが生じる可能性は小さいです)には取得希望をめぐってのトラブルになる可能性はあります。タンス預金などの金銭であれば動産といえますので,動産という記載であれば解決しますが,株式や有価証券には含まれません。預貯金となると,株式にも有価証券にも該当しません。動産には該当の可能性はありますが,解釈が割れて争いになる可能性もあります(もちろん,金額が小さい場合には問題にはならないでしょう)。

 預金類など残高があるものも残高を記載してしまうと,増えた部分をだれが取得するのかトラブルになるなど,財産の特定の仕方や記載の仕方には注意が必要です。不動産についても特定の仕方としては登記上の地番によるべきで,住所や固定資産税の課税通知書に記載されているものは避けておいた方が安全です(そのままでは登記ができないという可能性があるため)。

 このように,登記や名義変更,後で財産をだれが取得するのかの争いが生じないようにしておくために,記載内容や仕方には注意が必要です。

 

 

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