法律のいろは

生前贈与とともに遺留分対策をした場合の遺言書の記載に関する注意点

2017年1月20日 更新 

 相続人に対する生前贈与が遺留分侵害の対象となる部分について,法改正により規定が一部変更したとの話は以前触れました。その際に,他の財産を渡す・遺留分侵害請求の行使について可能な範囲で順位指定(遺贈同士の場合・同時期になされた生前贈与同士の場合)といった遺言やほかの生前贈与面での対応・保険活用についてはほかのコラムで触れています。

 また,遺留分の事前放棄や中小企業などの事業承継の場合の民法の特例についてもほかのコラムで触れています。こうした生前対策によって遺留分の侵害が起きない(起きても問題対応をしておく)際に,何かしら遺言書の記載で注意をする点はあるでしょうか?

 

 相続人に対する生前贈与は特別受益になるものが対象ではありますが,遺留分に関しては持ち戻し免除ができません(これを認めると遺留分の権利者に権利を認めた意味がなくなります)ので,そうした記載を遺言書に書いても遺留分との関係では意味がありません。遺産分割協議が生じる部分を残しているのであれば,そこでの調整不要という意味はあります。生前贈与された財産が遺留分侵害になるだろうことが避けられない場合には,先ほど挙げた対応をしておく必要がありますが,そうはならない場合や対策によって遺留分侵害の問題をクリアできる場合には,生前贈与した財産の金額を記載しておくことがトラブル防止には意味があります。もちろん,その評価額の信用性が争われては意味がありませんが,評価額や金銭である場合には金額を記載しておくことで(ここでの意味合いは過去の事実を報告するという意味合い),一部の相続人が過大な生前贈与を受けたのではないかという疑いの目を除く効果は期待できそうです。記載の信用性すら争われるケースでは,遺言をする段階からトラブルの可能性が相当に強い場合といえるでしょう。

 遺留分侵害額の評価基準自体は相続開始時ではあって,実際に侵害が発生している場合の支払い額は遺言作成時には確定していない面があります(中小企業などでの事業承継に関して,固定合意の特例を使う意味はここにあります)ので,贈与時の金額を書いていても問題の解決には限界はあります。ただし,繰り返しですが,侵害が起きないように対策をとっている場合には,各生前贈与をした金額を記載することで余計なトラブルを防ぐ意味合いが大きくなります。

 

 生前贈与や引地がせる財産の内容やその評価額によって,遺言の記載だけで済むのかどうかという面はありますが,最初に挙げたほかの対応とともにどのような方法がいいのかを考えて実行していくことになるでしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。