法律のいろは

亡くなった方の財産を相続しない場合に注意をすること

2017年2月26日 更新 

 遺言がない場合には,亡くなった方の一定範囲の親族(子供や妻・夫等)には相続が発生します。ただ,借金が多いなどの理由から相続をしたくないという場合があるかもしれません。そうした場合に,相続が自分について始まったことを知ってから3か月が経過するまでは問題なく,相続放棄という手続きをとることができます。

 ここでいう自分について相続が始まったのを知ってから,というのがどういう意味であるのかは別のころラムで触れています。今回は,こうした手続きとは別に法律で一定の場合に,相続をしたという扱いがなされることがあります。こういったことがあった場合には,相続をしたくないと考えても意味をなさないことになりかねません。そのため,相続しないという考えがある場合には注意を要することが出てきます。

 

 少し具体的なケースで考えてみましょう。亡くなった方に家や預金があるものの,相当多額の負債があり,相続による引継ぎを妻や子供が望まないと考えているケースを考えてみます。この場合に,たとえば,葬式やお墓のためのお金を無くなった方の財産から出したいという扱いがしたくなることはあるでしょう。何かしらのお金に換えるために家を売ってしまいたいという場合もあるかもしれません。こう言った事柄は問題が出てくることがあるのでしょうか?

 

 法律上,相続をしたという扱い(プラスもマイナスも全て引き継ぐ)のは,

 ①相続財産の全部あるいは一部を処分した ②相続放棄などをした後であっても(前も),相続財産を隠匿する・目録にあえて載せない・こっそり使ってしまうような背信的な行為があった場合

 であるとさだめられています。ただし,相続財産を保全するためのこと等は別とされています。

 

 先ほどの葬式やお墓のためにお金を使ってしまう場合でも,①にあてはまるように思われるかもしれません。こうした場合には,厳密に言えば,今触れた法律で定められた場「処分行為」というものに当てはまる可能性はあります。ただし,「保存行為」と呼ばれる財産保全の行為であれば該当しませんし,実際上は問題にならないことが多いように思われます。亡くなられた際にはついそこから葬式費用などを出したくなるのはあるかと思われますが,ここでは問題が大きく起きることは少ないように思われます。

 次に,何かしらのお金に換えるために亡くなった方名義の家を売ってしまうようなケースは,①(事情によっては②にも)該当する可能性があり,避けた方がいい話になります。家を売却する以外に借りていた家を解約する・家財を処分するという話にも似たような点がありますが,こちらも避けた方がいいように思われます。ちなみに,相続財産の処分をしても,相続が自分のために始まったことを知らなかった場合には①に該当しないいう判断を示した裁判例が存在します。

 ②の典型的な例としては,亡くなった方の債権者のお金の回収を逃れようとして,こっそりと財産を隠した・使ってしまうことが考えられます。

 

 このように,相続をしない場合には早期に相続放棄の手続きに移るとともに,相続をした扱いになると法律上定められた事柄にあたることをするのを避けるため,専門家に相談をした方がいいでしょう。ちなみに,亡くなった方の生命保険金の受取人になっている場合には,その金額などにもよりますが,相続税などの課税がされる場合もあり得ます。これは,生命保険金(亡くなった方が保険料を支払っていて,その方を被保険者とする場合)には税法上は相続財産などと考えるためです。保険金額が大きな場合などには税理士の方にも相談をした方がいいケースもありえます。

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