法律のいろは

民法の改正について(その①)

2017年5月27日 更新 

 ここ最近民法の改正案が成立の方向であるというニュース記事が出てきていましたが,本日参議院で可決成立したとの報道がありました。周知期間を3年程度設けるという記事を見かけましたが,後数年後には「民法」という身近な法律に変化が生じることになります。

 今回の改正は ・新たなルールを設けること ・これまで裁判例で判断された内容等の反映 といった点が大きく,かつ改正点が多岐に渡るため,影響は相当程度は出るのではないかと思われます。ここ数年民法の改正については様々本が出され議論がなされてきました。特に,いつまでお金の請求ができるのか(されるのか)に大きくかかわりかねない時効の話は大きな影響を与えることになるのではないかと思われます。

 

 今回は,そうしたたくさんある事柄の中のごくわずかの話にすぎませんが,賃貸に関わる話の一部を取り上げたいと思います。なお,現在接することができたのが参議院へ送付された法案の内容ですので,これに沿って触れていきます。

 賃貸に関わる部分の改正点もたくさんありますが,関わりの特にありそうな点から言えば

 ・原状回復義務の内容(契約が終了して,借りた際の状況に戻すという借主の義務の内容)を明確化したこと

 ・敷金の内容等を法律に盛り込んだこと

 が挙げられます。いずれも,これまで裁判例で取り上げられてきたことを法律に定めたというのが大きな点ですから,大きな変化には直ちにはつながりません。

  原状回復については,借主が自らのせいで壊すなどした部分を除き,経年劣化した部分・通常の使い方をしていれば生じる劣化,傷の部分を除いて元に戻すという概要の話になります。賃貸借契約で別に合意をしていれば,この義務の内容が変わってくる点はありえます。

 大まかにいって,敷金は,賃貸借契約の際に借主が貸主にお金の支払いに充ててもらう(担保)のために差し入れるお金のことを指します。途中で借主が代わる場合には明け渡し時に清算を行うこと・未払いの家賃や借主が壊したものの修理費など借主が貸主に支払うものの支払いに充てられるもので,借主側からは支払いに充ててくれということができないものであるとさだめられることになります。こうした点も以前に裁判例で判断が出ていたところです。

 

 今の点に関係をするところとして,借りた部屋等に破損が生じた場合の直す義務は誰が負うのかという点があります。賃貸借契約書に特約として,小さな修理は借主が行う等の記載があり,その有効性が争われることはありえます。ただし,これまでと同じく修理義務は基本的には貸主が負います。ただし,借主側がうっかりと壊した,わざと壊した場合には,借主が修理する義務を負います。このほか,これまで法律でははっきりしていなかった貸主が修理をできるのかという点もはっきりと法律で明らかにされています。借主,修理してほしいと貸主に依頼しても普通は修理してくれるだろう期間の間に修理してくれないときや,修理を急いでしないと生活などに関わるような場合には,修理ができるとさだめられることになりました。

 当たり前のことではないかという感想を持った方もいるでしょうが,これまではこうした点は法律に書かれていなかったために加えられることになりました。

 

 このほかにも,内容が変わった点はあります。その一つ目は,賃貸借契約における上限ですが50年(更新の場合も50年)とするというものです。これまでは20年でしたが,他の法律の規定や現状の慣行にあわないこともあって変更されることになりました。実際に部屋を借りる程度であれば,そこまで長期化はしないと思われますが,他の目的である場合には意味を持つこともあるでしょう。

 

 途中ですが,長くなりましたので次回に続きます。

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