法律のいろは

相続や遺産分割・遺留分に関する民法改正の概要とは?

2017年7月22日 更新 

 平成30年に民法のうち相続に関する部分が改正され多くが令和元年7月からの相続に適用されるとともに,自筆証書遺言については保管サービスが別の法律で設けられるようになりました。改正の概要について触れます。

 

 改正の概要としては,①亡くなった方の配偶者に住んでいた家に住めるような保護策を設ける②遺産のうちの預貯金からの仮払いに関する事柄その他遺産分割に関する事項③遺言執行に関する事柄④遺留分制度に関する事柄,その他が挙げられます。

 

 以下では,①から順に概要を触れていきます。亡くなった方の配偶者に関しては以前から居住用の家に住んでいた場合には,遺産分割まで無償で貸す扱いを認める裁判例が存在していました。今出ている案では,一部でも居住用である家に相続が始まる前から無償で住んでいた配偶者に関して,無償で住むことができるという内容(短期居住権と呼ばれるものです)と長期居住権と呼ばれるものが提案されています。長期居住権とは,遺産分割の際の相続人の協議や亡くなった方の遺言などによって,配偶者がなくなるまであるいは一定の期間,居住用の家に住めるようにする制度です。こうすることによって,夫に先立たれた妻の居住する家を確保すること等を目指しています。

 この長期居住権は,特に期間を定めていない場合には,配偶者がなくなるまでのものと基本的に扱うなど,配偶者の保護としての意味合いが強く,登記をすることで居住権を妨害する方への対抗措置を取れる等権利として勁意味合いを持っています。

 

 次に②に関しては,これまでも行われて遺産の一部分割の制度を正面から規定したこと・預金の仮払い制度(家庭裁判所の判断が介在するもの・介在しないもの)の創設・相続開始から遺産分割の間までに遺産が一部処分された場合に,その遺産がまだ存在するものと扱って遺産分割をする制度の創設です。

 他のコラムで触れていないことをここで触れますが,一部の遺産分割はこれまでも解決可能な部分での遺産分割は小規模宅地の特例の活用ができるようにその他さまざまな理由から行われてきました。一部の遺産が漏れていた場合の追加分割もこうした例の一つです。改正のより,一部の遺産について先行して遺産分割を行うことが正面から認められましたが,例外的に禁止される場合があります。それは一部を先に分割ることでほかの相続人の利益を侵害する恐れがある場合です。例えば,遺産に含まれる不動産の先行分割を行うことになり,相続人の一人が取得する遺産分割を希望したケースで考えてみます。他の遺産に預金があるものの,建物の取得を希望する方に代償金の支払い能力が乏しく預金での調整がつききらない(それだけの不動産の評価額がある)場合です。この場合には,代償金の支払いの見通しや調整の余地がないため,最終的に本来の取り分に照らした適正な分割ができなくなる可能性があります。

 特別受益等の遺産分割での調整要素は,一部先行分割でも後の分割でも考慮することは可能です。その他預金の仮払いや仮分割は保管コラムで詳しく触れていますので,相続開始前・遺産分割までに遺産の一部を処分された場合の話を触れておきます。本来遺産分割の対象は遺産でかつ遺産分割をする時点で存在しているものですので,処分をされてしまうと遺産分割の対象には本来ならない性質のものでした。これを処分した方以外のすべての相続人の同意があれば遺産分割の対象に含めることができます。いわゆる相続開始後に遺産に含まれる預金の払い戻しがあった場面(預金凍結前)には,他に遺産がある限りはこの制度を使って遺産分割協議の中での解決を図ることは可能です。相続開始前の引き出しや全ての遺産が引き出されたようなケースでは使うことはできません。

 

 次に③については,遺言をする方が自分で書く自筆証書遺言に関して,有効性に関する前提を一部緩和することや法務局へ保管をすることができる制度,遺言執行者の役割に関する事柄で特に「相続させる」等の遺言がる際にどこまでできるのかが明らかにされました。別のコラムで詳しく触れています。

 最後に④は遺留分の権利行使が,お金の清算を求める権利へと変化し,侵害の考慮対象となる相続人に対する生前贈与の範囲が一部変更になていることや遺留分侵害の計算式の明確化がなされています。遺留分侵害の計算式では,遺留分の権利を有する方の取り分の考慮の仕方として,特別受益等の調整要素を考慮したうえでの遺産分割協議で取得すべき金額を差し引くなどの点が明確にされました(改正前は運用で争いのあった点です)。

 

 

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