法律のいろは

遺言が無効かどうか問題とされるケースとは?(その⑩)

2017年8月30日 更新 

 遺言が無効かどうかが問題になる際には,自分で書いた遺言(自筆証書遺言)の場合には,遺言を書けるだけの判断能力がなかった・偽造である・法律で定められた様式でないといった理由で無効の主張を出されることが多いように思われます。そのほかに,こうした点の問題とは別に遺言で書かれた内容が全く不明確で意味を持たないから無効という言い分が出されることもあります。

 

 そうした言い分に基づく無効の主張はどう扱われるのでしょうか?結論から言えば,遺言の記載した内容等から一部でも記載内容の解釈が合理的にできるのであれば,その範囲で有効と判断される傾向に裁判例はあると考えられます。このことは,この主張が法律上の無効原因とされているものとは異なり,遺言としての意味を持たないもの(内容が不明確で解釈の余地がない場合には,意味がないことになります。例えば,誰かにある財産を相続させたいと思っていても,相続させるものが全く不明確である(包括的なものでもない場合)・誰であるのかもわからないケースが考えられます)・解釈の余地があり別の解釈によるべきであるとするものも想定されます。全く不明確な遺言であるとの記載内容が問題にされたものについて,実際の裁判例の中では,遺言を書くだけの判断能力がない等の争いがなされる中で書くだけの動機や経緯,記載内容が問題になるものもあります。ここでは判断能力(遺言能力)という無効の理由があるのかという点も問題となっています。

 実際に記載の内容が全く不特定であるかが問題になったケースとして,自分で書いた遺言(自筆証書遺言)で不動産を贈与する(遺贈)と書かれていたものの,不動産の特定などがきちんとされているかどうか(特定がなされていないから,遺言の内容は不明確で無効かどうかが問題となったもの)があります。このケースにおいて,裁判所は,遺言をした方の意思に基づき遺言がなされた場合には,可能な限り有効になるように解釈を行い,確実・合理的に解釈できる範囲の意味で有効として扱うべきだと判断をしています。

 

 こうした場合に,遺言をするに至った経緯等遺言以外の事情も考慮してどのような趣旨の遺言としてなされたのかを確認していく作業を裁判になった場合にはしていくことになります(裁判所の判断でも同じようになされていきます)。そのため,遺言内容から紛争が起きそうな場合には,それまでの経緯等から記載内容をしっかりと解釈できるかどうかが問題になってくるでしょう。実際に先ほど取り上げました裁判例の判断では,記載内容から判断できる解釈内容を考えたうえで(このケースでは二通り),それまでの経緯等からどうした遺言をしたのか・遺言を残すならばどのような意図であったのだろうかを検討していっています。

 

 もちろん,こうした点を踏まえても全く意味が理解できないような場合は経緯等から見てあまりにも荒唐無稽な場合には,無効になるリスク・大きな紛争を抱えていくリスクが大きくなってきます。専門家が関与した遺言や公正証書遺言ではこうしたケースはなかなか考えにくいところです。自筆証書遺言の中には記載の趣旨が不明確で複数の解釈ができる記載もありうるところです。仮に無意味なものであれば,遺言をした方の意思が無駄になりますし,争いになり解釈によって真意を探る作業も本当の真意かどうかまでは分からないという点で,可能な限り避けた方がいい話かと思荒れます。実際に遺言を残す場合などには後のこうした問題の可能性を考えていく必要性があるでしょう。

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