法律のいろは

遺言者が自分で書いた遺言の内容をどのように解釈するのかが問題となったケース

2017年11月9日 更新 

 遺言の書き方に関する本は巷でたくさんあり,実際費用面その他の理由からご自身で遺言書を作成するケースがあります。その際には,法律で定められた事柄が守られているか(守られていないと無効になる可能性があります)・遺言をできるだけの判断能力があったかのほかに,遺言の内容から見て遺言が有効かどうかが問題になることがあります。

 こうした場合に,遺言の効力自体を直接争う形のほかに,遺言に基づく請求に関する争いの中で前提として遺言が有効かどうかが争え荒れることがあります。たとえば,家や土地の名義を変えてほしいというものです。今回は,遺言内容から見て遺言が有効かどうかが問題となったケース(裁判例)を取り上げていきます。

 

 問題となったのは,遺言をした方の妻子がその弟に対して遺言の無効を主張したものです。問題となった遺言は,自殺をした遺言者が残した「私に万が一のことがあれば本件全てを実弟に渡してください」という内容が何を指すのか・全く意味不明であるから遺言として意味を持たない(無効)かが問題となったものです。

 既に別のコラムでも触れていますが,遺言の内容については,書かれている言葉をそのまま解釈するだけでなく,他の項目や全体との関連・遺言書が書かれた際の状況や遺言をした方に関わる事情等を考慮して,遺言をした方の意思を探求するべきであると考えられます。

 

 そのため,遺言をした方の状況や作成時の事情など,遺言をした際の流れや背景を含めて考えていくことになります。このケースでは,裁判所の判断で認定された事実関係を要約すると,

 ・遺言をした方は会社の役員をした方であった。

 ・実弟とは母の介護に関して揉めたことがあった。

 ・遺言をする一年以内の範囲で,遺言をした方は入院などをしており,その際に妻とは離婚問題で揉めていたこと

  子供を含めて世話などはしてくれなかった等の事情があった。

 ・妻子との疎遠等の事情があった中で,遺言をした方は実弟の世話になっていた。世話になったのは,遺言をした方が困窮   

  したなどの背景があった

 ・問題となった遺言書は,遺言をした方の勤務先の机から見つかった。その机の中には通帳と目録があった。

 

というものです。

 

  このケースでは,「万が一」や「本件全て」が曖昧で何を指すかはっきりしないから無効であるとの言い分が出ていました。これに対し,裁判所の判断では,先ほどの事実関係を踏まえて文言を見ると,勤務先の机の中に保管していたものを・遺言をした方がなくなった際には・実弟に譲りたい(贈与したい)という意味であると解釈できると判断しています。つまり,遺言は有効であると判断をしています。

 

 このように,遺言の有効性や意味内容を考える際には背景事情も重要になりますが,できる限り後で問題が起きないようにはっきりした内容を作っておくにこしたことはありません。弁護士など専門家に相談をしながら遺言をしていくというのも一つの方法でしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。