法律のいろは

「空き家」になっている実家をそのままにしておくことで発生する問題(その②)

2017年12月5日 更新 

 主に田舎にある空き家になった状態のままの実家を前提に,そのままにしておくことのリスクを前回は傾くなど倒壊の危険が生じている場合の話を触れました。今回は似ていますが,実際に屋根などの建物の一部が崩れてしまったという場合はどうかという話を触れていきます。

 

 こうした話が問題になるのは,崩れたものが隣の家や道路に落下して通行や利用に大きな影響を妨げるような場合が考えられます。このような場合には,落下したものなど相当な量であることが考えられます。常識的に考えれば,相続をしたモノであれば,こうした他の方の迷惑をかける状況であれば撤去するのは当然という考えも出てきます。実際に,隣地の家の利用を妨げるケースでは,法律では明確な規定はありませんが,自分の所有する家の利用が妨害されたとして,撤去を求めることができます(妨害排除請求権といいます)。

 

 そのため,臨地の家の方から撤去をするように求められた場合には,応じる必要があります。仮に応じない場合は裁判などになるリスクもあります。

 とはいえ,隣地の方から撤去したからその費用を支払えということで突然請求が来ても,実際にご自身の実家の一部が崩落して隣地の家の利用を妨げたのかどうか・その撤去に仏用な作業と費用かどうかはよく確認をしておく必要があります。逆から言えば,仮にご自身の家に隣地の家の屋根などが崩れてきて利用ができない(たとえば,駐車スペースに落ちてきたため駐車できなくなった)場合に,当然だからということで何の記録も取らずに撤去をして後で費用を請求した場合のリスクも考えておく必要があるでしょう。

 ここでは,支払いを求めた相手方にとっては,突然の請求の可能性もあり,実際に自分の家(空き家かどうかに関わりません)の崩落などが原因かどうか等がわかりません。相手方が争ってきた場合には,そもそも崩落があったのかどうかという事実関係そのものが大きな争点となりかねません。こうしたことを防ぐには,事前に写真等で記録をよく残しておくとともに,相手方にも連絡をして状況を示して撤去などの対応を求めておく(可能であれば,ここも後でいった言わないの問題にならないように記録で残しておく)ことが重要になってくると考えられます。

 特に日常目につくはずの所であればこうしたトラブルはそこまでないと思われますが,普段見ていない場所であれば突然の請求をされることでの戸惑いなどはありうるところです。余計なトラブルが起きないように注意をしたいところですね。

 

 問題となるのは現時点で(令和2年年末時点)政府では所有者不明土地についての権利放棄の話などを検討してはいますが,空き家については少なくとも権利を放棄することはできないという点です。よく「負動産」と言われることもありますが,使う予定がなく売却も簡単にはできない空き家であっても相続の対象となり,今述べた義務が引き継がれていく可能性がある点に注意が必要です。

 

 次回に続きます。

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