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ハーグ条約に基づく返還決定を経た場合に,決定に従わないことへの引渡し請求を認めた裁判例(その②)

2018年3月16日 更新 

 昨日,最高裁で出された子の奪い合いに関するハーグ条約に基づく返還命令が出された後の引き渡し請求の判断を触れました。今回はその続きです。

 

 今回とられた手続きは,人身保護法という法律に基づく請求です。拘束をしている方に対して引き渡しを求めるもので,法律上,拘束されているといえるのか・拘束について違法性が顕著といえるかが問題となります。今回のケースでは双方が親権を持つ子供について,父親側が母親側に引渡しを求めています。こうしたケースについて,これまでの判断では,控訴といえる場合を限定しています。「拘束」といえるのは,対象となっている方(ここでは子供)が行動する自由を奪われている必要がありますが,親権(監護養育する権利)を持つ方のもとにいる場合には,通常は自由を奪われているとは言いにくいと考えられます。こうした点などもあって,その子供の自由な意思で監護養育している親の元にとどまっていないといえるだけの事情がある場合に初めて拘束といえると判断されています(ただし,赤ん坊など意思を表明できないと考えられる場合は別です)。

 このケースでも,そうした場合に当たるかが問題になっています。第2審では,子供が日本に移された後学校に通うなど健やかに生活をしていることや判断を示せない等の事情がないことから,子供の自由な意思に反した状況ではないと判断し,高速ではないと述べています。つまり,請求は認められませんでした。

 これに対し,最高裁では,国境を越えて親の一方が子供をつれて出た場合には,将来どこを生活の本拠にするのか・重国籍(細かい話は置きますが,このケースではアメリカ合衆国と日本の重国籍の状態で,将来どちらにするのか選ぶ必要が法律上出てきます)の子供について,将来どちらの国籍を選ぶのがいいのかも問題になりうるから,現在監護している親の元に留まるかは重大な問題で判断するのが困難な話であると述べています。ここからは,相当難しい判断であるから自由な意思は示しにくいということが言えます。また,国境をまたぐことで言語や文化が異なってくるために意思決定するのに必要な情報を取りにくい傾向にあると述べています。

 

 そのうえで,一般的に子供が連れ出される場合(国境をまたぐかどうかは関係ありません)には,親双方の感情的な対立が大きくなる傾向にある点を考慮して,困難かつ重要な判断をするのに必要な様々な情報と子供が得ているといえるか・養育監護している親からの不当な心理的影響があるかなどを慎重に考慮する必要があると判断しています。

 

 このケースでは,11歳という十分な判断をできる状況ではない年齢で,生活の本拠ではない日本に子供が来たこと・その後父親側と十分な意思疎通が取れなかったこと・連れ去った母親側が養育し,生活を依存している状況であったことを前提に結論を示しています。母親側がいわゆるハーグ条約に基づく返還命令に従わず手続きのも抵抗を示したこと等をもとに,先ほどの情報を得ているかどうか・心理面で不当な影響を受けているのか等の点で問題が大きく,自由な意思でとどまっているとは言えないと判断しています。つまり,「拘束」であるということです。

 

 次に,拘束の違法性が顕著といえるかどうかという点については,いわゆるハーグ条約に基づく返還命令が出されている場合に従わなければ,原則として違法性が顕著であると述べています。

 

 

 実際に大きな問題となるのかどうかは「拘束」に当たるのかどうかという点かと思われますが,いわゆるハーグ条約に基づく返還命令に従わなかったからといって当然に「違法性が顕著」な「拘束」と判断されるわけではないことには注意が必要でしょう。子供のつれられた際の年齢やその後のほかの親との交流などの状況も考慮されるものと思われます。また,「拘束」といえるかどうかに関する子供の自由な意思かどうかという点で,一般的な「連れ去り言われるケースの話もなされていますが,この判断自体は自由な判断がより難しくなる文化や言語が異なる国境を超えたケースを念頭に置いたものです。今後日本国内での一方の親が子供をつれて出たケースにどのような影響がでてくるのかは定かではありませんが,注目をしていきたいところですね。

 

 

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