法律のいろは

NHKの受信契約がいつ成立するのか・受信料の消滅時効がいつからスタートするのかを判断した最高裁の判断(その③)

2017年12月9日 更新 

 前回,契約の締結に応じない場合に,いつ・どのような形で契約締結の強制手続きがなされるか・手続きがなされたとして,いつの時点から受信料が生じるかという話をしました。少なくとも注意点としては,「受信設備」がある場合に契約締結に応じない場合には,裁判手続きでの強制がなされうる点が今回の最高裁の判断からは言えるでしょう。

 

 前回,受診規約に基づき,契約自体は契約締結に応じるよう強制する裁判の判決が確定した際だけれども,「受信設備」を設置したときであるとの話を触れました。こうした場合に,時効はどこからスタートするのかというのが④の問題です。これに近い話は既に別のコラムでも触れていますが,再度詳しく取り上げます。

 

 受信料は規約によると,2か月分・6か月分・12か月分を支払う方法とされていて,現在の民法の決まりでは「年よりも短い時期」で定めた定期的に支払うお金ですから5年で時効にかかります(ちなみに,ここの点も民法の改正の影響は一応あるところです)。この期間が過ぎると,時効の主張をすると(「援用」と呼ばれるものです),裁判などでは請求ができなくなります。そのため,いつからこの5年がスタートするかは大事な問題になります。

 民法の改正で,どこからスタートするかは変わってきますが,現在の決まりでは「権利を行使することができるとき」から5年となっています。ちなみに,いつから適用されるかは確定していませんが,今年なされた民法改正により,このスタートラインには新たなものが加わります。「債権者が権利を行使することができることを知ってから」がスタートになり,この場合は5年が経過すると時効に必要な期間が経過します。受信料のケースでいえば,「債権者」はNHKとなります。

 

 問題となった裁判では,このスタート時点(「権利を行使することができるとき」)について,

 ・契約上の本来の支払い時期(受信設備設置時から受信料の支払い義務が生じますので,その支払い時期)

 という主張と

 ・受信契約が成立してからである

 との点で争いがありました。前者の話によると,裁判での判決の確定(争いができなくなった時点)までに「受信設備」の設置から相当時間が経過していると,時効によって一部の受信料の請求が認められなくなる可能性が出てきます。

 

 この点について,最高裁の判断では結論として,受信契約が成立してからであると述べています。つまり,契約締結に応じない方については,強制するための裁判の判決が確定するまで時効になることはおよそないということになります。

 この理由について,判決の中では「受信設備」を設置しても連絡をしない方について,設置を把握するのは困難であること・「受信設備」を設置した場合には契約を締結する義務があるのだから,応じない方に不利益が生じてもやむを得ないという点を述べています。

 ちなみに,後者の法律上の義務を守らない点を述べる者ですが,事故の損害賠償等法律で認められた支払い義務を守らない場合でも時効のスタートがいつまでもしないということはない(交通事故でも20年の経過により原則として損害賠償をする義務はなくなります)ことと均衡がとれないのではないかという反対意見も存在しています。

 

 いずれにしても,今回の判断を前提にすると,契約締結に応じない方のリスクはそれなりに大きくなってくるものといえるでしょう。

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