法律のいろは

離婚後の養育費(その21)

2013年11月23日 更新 

 以前,離婚の際の養育費の取り決め(未成年の子供に関するもの)で一括払いの話をしました。これとは逆に父母の間で未成年の子供の養育費を支払わないという合意をすることもあります。一見こうした合意がありうるのか・ありえるものとしても有効と考えていいのかという問題が出てきます。

 

 まず,こうした合意をするケースは十分考えられます。合意をした以上は,原則として養育費という形での請求はできなくなります。例外としては,こうした合意が有効でない場合と合意後に事情の変化があった場合です。

 次に,養育費を払わないという合意が有効かという点です。基本的には有効です。養育費とは,子どもの養育監護に関わる費用の負担をどうするかという話ですから,子どもの養育監護をしていない親が負担しないという話のつけ方も十分考えられるからです。ただし,離婚に至る際の事情やその他いろいろな事情を考慮して,公序良俗に反する等と法律的に評価されれば,話は別です。こうした場合は,先ほども触れた合意が有効ではないケースに当たります。

 

 先ほど触れた事情の変更があれば,合意があっても請求できるという話について,触れておきます。これは,養育費の増額や減額を求める場合と同じで,それまで合意した養育費に関する取り決めをそのままにしておくことに大きな問題が出て来た場合には,養育費の変更を求められるという話です。

 

 養育費に関わる約束・合意は父母の間でなされるもので,子ども自身は関わっていません。一方法律では,親は子供に対して扶養義務を負うとされています。ここで問題となるのは,子ども自身が養育費を払わない親に対して,こうした約束があっても扶養のために必要な生活費を請求できるかどうかです。

 この問題については,実質は約束をした親が請求するのに等しい(子ども自身は未成年であれば法定代理人として親権をもつ親が代理人として請求します)と考えれば,合意が骨抜きになるからと考えることもできなくはありません。しかし,あくまでも養育費の約束は父母の間でのものであることから,一般には子どもからの扶養のための生活費の請求を否定することは難しいと考えるのが裁判例の傾向です。

 ただし,子どもが親権を持った親やその親族からの援助で十分生活できている場合には,扶養の必要性がないので,こうした請求は認められにくいです。また,こうした約束・合意が父母の間でなされていることは,生活費に関して,裁判所が判断する場合には,考慮される要素にはなります。

 

 このように,養育費を払わないという合意には色々な問題があります。次回に続きます。

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