法律のいろは

残業代とは何でしょうか(その⑦)?

2013年11月30日 更新 

  残業代に関して,最近にか限りませんが問題になっているケースはよくあります。企業側は請求を防ぎ

たいですし,務めている方は支払われないことがおかしいという思いを持つものではないかと思われます。ある程度残業が予測される場合に,残業代込の給料にしておけば,後で問題になるケースが少なくしようという考えも出てくるかもしれません。今回は,残業代を含んだ給料となっている場合の残業代の問題について触れます。

 

 こうした給料の出し方には基本給の一部に残業代を組み込む形と基本給とは別の手当という形(必ずしも残業手当という名前とは限りません)の2つのタイプが存在します。こうした手当を支給しておけば残業代の問題が無くなるのかと言えば,そうは簡単ではありません。

 こうした残業代は,予測した時間(たとえば,月20時間の時間外労働・8時間の休日労働)の残業に対する残業代にはなりますけど,それ以上に残業があった場合には当然残業代を払う必要があります。問題となるのは,そもそもこうした残業手当によって残業代をそもそも払ったことになるのか,簡単に言えば残業手当が有効かどうかという点です。

 残業代を払ったとはいえないのであれば,残業手当とは別に残業代をいちから払う必要があるため,大きな問題となります。この問題に関して,以前から裁判例では,

 ①残業代部分とそれ以外がはっきりと区別できるようでないといけない

 ②残業代部分で予定しているよりも残業があった場合には,追加で残業代を清算しないといけない

 という判断がされてきました。

 

 こうした判断に昨年さらに大きな判断がされました。問題となったケースでは,月の基本給41万円を従業員の方に払い,一月あたり140時間しか働かない場合には41万円から給料を引いていく・180時間以上働いた場合には追加のお金を支払うという給料の定めがあったものです。

 こうしたケースで,毎月180時間以下しか働いていない場合にも追加で残業代を払う必要があるかということが問題になったケースでした。先ほどの定めで残業手当に問題がなければ,毎月180時間以内しか働いていない場合には残業代は基本給に組み込まれているから,払う必要が無くなります。逆に問題がある(残業代を払ったとはいえない)場合には,180時間以内の勤務でも残業代を払う必要が出てきます。

 特殊なケースではありますが,裁判所はこうした定めでは残業代とそうでない部分が区別できないと捉えて,残業代を払うべきであると判断しています。その理由として,それまでこうした給料(基本給)41万円が基本給以外に残業代を含むとはされていなかった上に,残業代の対象となる時間外勤務の時間が勤務日数が月によって変わる事を理由として挙げています。

 

 この他にこの判決には注目すべき点がありますが,次回に続きます。

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