法律のいろは

離婚調停について(その㉕)

2013年12月11日 更新 

 調停が成立すると、合意した内容を調停条項にまとめ、調停調書を作成する、ということは以前にお話ししたとおりです。

 今回は、調停調書の条項に少し踏み込んで考えていきたいと思います。

 調停条項には、大きく分けて、もし相手方が履行しなければ、国家権力の力を借りて、強制的に履行を求められる条項と、そうでない条項に分けられます。

 後者の、強制的に履行を求めることができない条項としては、いわゆる①任意条項と、②道義条項、③清算条項があります。

 このうち、①の任意条項は、特に条項で書かれていなくても法律上は当然に効力が生じている条項です。

 たとえば、調停費用について話合いで決めなければ、法律上自分が出した費用は自分持ちとなります。それをわざわざ「調停費用は各自の負担とする」という定めを置く場合が挙げられます。

 通常は調停成立の際、この記載がされるのが一般ですが、当事者の意思を尊重して書かれることが多いようです。

 次に②道義条項というのは、たとえば夫婦円満調停成立のときに、「申立人と相手方は、今後互いに協力し合って円満な家庭を築くよう努力する」といった条項が例として挙げられます。要は、お互いそれぞれ道義的な責任を認めて、今後の紛争を防ぐための定めです。

 もっとも、条項の内容によっては、あとでお話しする給付条項との区別が不明瞭になることがあるので、注意が必要です。詳しくは給付条項のところでお話ししたいと思います。

 ③清算条項は、通常調停条項の最後に書かれている、「当事者双方は、本件に関し、本件調停条項に定めるもののほか、何らの債権債務関係がないことを相互に確認する」という条項です。せっかく成立した調停条項が蒸し返され、将来再び紛争になるのを防ぐため、設けられます。

 ですから、離婚が成立しても、後日財産分与や慰謝料を別途請求したいという場合には、こういった条項を入れると請求できなくなるので、入れないようにする必要があります。

 もっとも、養育費や婚姻費用については、一旦決めた金額を当事者の経済状況の変化などにより、減額・あるいは増額する必要があれば、増額請求・減額請求をすることができます。

 また、年金分割請求はやや特殊になります。年金分割は他方に対する請求ではなく、公法上の請求なので、当事者でたとえ上記のような清算条項を設けていても、後日年金分割を求めることができます。ただし、「年金分割の審判の申立をしない」とか、「当事者双方は年金分割事件の申立をしない」といった、権利行使自体を放棄する内容の合意をすると、年金分割請求ができなくなりますので、そのような条項を設けるのであれば、慎重に行う必要があるでしょう。

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