法律のいろは

結婚と親子関係についての最近の最高裁の判断

2014年1月9日 更新 

 昨年に最高裁判所が下した判断で親子関係に関するものがありましたので,今日はその紹介をしたいと思います。

 

 問題になったのは,性同一性障害の方が性別の変更を認める審判を受け,その後に結婚した女性との間に人工授精の結果生まれた子供を夫婦の子供として認めるかどうか(厳密には,戸籍の記載に嫡出子という結婚で生まれた子供としての記載をす認めるかどうか)という話です。

 

 法律上は,結婚した後200日経過した後に生まれた子供は夫婦の子供と推定するという扱いをしています。性別変更の審判があった後に結婚した場合は,その後に生物学的には夫婦の子供は生まれないのではないかという考えが一方では成り立ちえます。これに対して,結婚できる以上は結婚した場合に生まれた子供は夫婦の子供と扱う法律上の規定が適用されないのはおかしいとも考えられますので,問題が出て来たところです。

 この決定に至る高等裁判所などでの判断では,先ほど触れました法律上の定めは,血縁を基礎として,家庭の平和や父子関係を早く安定させることなどを目的とするため,血縁が考えられない場合には適用されないとの考えを下敷きにしています。つまり,血縁が考えられないところに親子関係を推定することはなく,戸籍の記載も親子を前提としないという判断です。

 

 これに対し,最高裁判所の決定では,性別の変更の審判を経て変更が認められた場合には,法律上は変更後の性別として扱われる・その後は変更を前提に結婚もできるなど法律上は変更後の性別で扱われることを大きな判断の基礎にしています。簡単に言えば,法律上変更後の性別としての扱いを,明確な例外が法律上定められていない限り受けるという話です。そして,結婚後に生まれた子供については,例外を定める法律がないのだから,性別変更が問題とならない場合と同じく,結婚した夫婦の子供として扱うべきと判断しています。

 

 この裁判で問題となっている話は非常に難しい話です。最高裁判所の判断でも意見は二つに割れており,先ほど触れた血縁重視の根拠から結論に反対する意見も出されています。この判断については意外な結果という向きと当然という向きの双方があるかと思われます。

 ただ,以前最高裁は,いわゆる代理母による出産によって生まれた子供に関して,血縁関係を重視するのが法律の考え方であることを前提に,子どもを実際に出産(分娩した)人を母親と判断しています。つまり,卵子を提供した女性と代理母が出産した子供との間の親子関係を否定しています。非常に対照的な判断ではありますが,個別の法律で対応すべき問題と言っているところからは,個別の法律で対応している今回紹介した裁判例とは整合性はあるのでしょう。

 親子関係とは何かを考えさせられる裁判例という印象があります。

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