法律のいろは

結婚と親子関係についての最近の最高裁の判断(続き)

2014年1月11日 更新 

 前回,昨年12月に出た結婚と親子関係を巡る最高裁の判断について触れました。今回は,前回の後半で少し触れた代理母を巡る親子関係に関する判断に触れつつ補足していきたいと思います。

 

 

 問題になったケースは次のようなものです。日本人の夫婦が,妻の卵子に夫の精子を受精させた受精卵をアメリカ合衆国のネバダ州で代理出産する契約を現地の女性との間で締結しました。これは,受精卵を精子卵子と無関係な女性を胎内で育て出産することです。契約条項中には,その女性は子供の親権を求めず,法律上も日本人の夫婦が親であるとの記載がありました。その女性が出産後に,アメリカが終国ネバダ州の裁判所が日本人夫婦と子供に血縁があり,法律上も実親子であるとの判断がありました。

 日本人夫婦が帰国後に夫婦の子として戸籍届出をしたところ,戸籍届出を受理しないという扱いを役所がしたために,受理を求めたのが裁判の内容です。

 

 問題となるのは次の2点です

 ①生まれた子供の精子・卵子ともに夫婦由来であるため,血縁関係があるのに親子ではないのかという点

 ②アメリカ合衆国ネバダ州の裁判所が判断したことはどんな意味を持つのか

 

 まず,②についてですが,外国の判決が日本でも通用するためにはいくつかの条件が法律上定められています。このケースで問題となったのは判決の内容が日本での公序良俗に反するかどうかという点でした。簡単に言えば,日本の法律の基本原則に反する外国の判決は日本では通用しないという話です。

 ここで①が関係してきます。①の点があっても親子関係を法律で認めないのが日本での法律の基本原則かという点です。血縁関係を重視すれば,それはおかしいという方向に話が進む可能性が出てきます。日本の法律上,出産したものが母親という決まりははっきりとはありません。ただし,法律は妊娠・出産を前提としていると考えられており,これまでの最高裁の判断では分娩によって母子関係は決まるとの判断がありました(ただし,認知は母子関係では不要と判断する文脈での話)。

 

 このケースでも,これまでの裁判例の流れに従い,法律上は出産したものが母親であると判断をしています。ただし,代理母という問題には個別の法律で対応すべきであるとしており,今後代理母の場合の親権に関する法律が整備されれば,その法律のとおりとなるとの示唆もされています。前回触れたケースは性別変更の審判について定めた個別の法律が存在したケースであり,原則的な親子関係の定めについての例外となりうる話という位置づけなのかなと思われます。

 

 なお,この代理母の方のケースでも,特別養子縁組の制度を使えば,ある程度目的を達成することができます。特別養子縁組の話はいずれ触れたいと思います。

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