法律のいろは

 前回は,認知に関して,認知無効の意味合いとその原因は何かという話に触れました。今回は,これまでの2回の話を踏まえて,平成26年1月14日に最高裁で出された判断について,ある程度触れていきます。

 

 まず,問題になったケースはどのようなものだったのでしょうか?男性が外国籍の女性と結婚し,結婚の数年前に既に生まれた子供を結婚後に認知しました。認知の際に,子供が自分と血縁がないことは男性の側で知っていた事情がありました。判決で認定された事実では,結婚後数年で夫婦仲は疎遠となって,裁判離婚をしたようです。このケースでは,判決の「意見」(結論的には判決のとおりでいいけれども,理由が異なるもの)で書かれているように,子供には外国籍(フィリピン)の男性が血縁上の父親であるとの特殊な事情があります。この特殊な事情がどんな意味を持ちうるのかは,あとで「意見」について触れるところで述べたいと思います。

 

 この裁判では,こうした事情を背景に,一度血縁にないことを知りつつ,認知をした男性が認知の無効を求めることができるかが争点となっています。その問題点は次のようなものです(前々回に少し触れました)。

 法律上,一方では,認知をした父・母は,認知の取り消しができないと定められています。他方で,子供や利害関係人は認知が血縁に基かないものであることを主張して認知の無効を主張できるとされています。「利害関係人」に父が含まれるのか・父が無効を主張できるとすると,認知の取り消しができないことと矛盾するのではないかということが問題となってきます。

 

 この問題については,これまで次のように考えられてきました。

 まず,戦前の裁判例(大正時代のもの)は,次のように述べて,認知をした方が認知の向こうは求められないと判断しています。

 戦後に民法が改正される前の定め(認知をした父・母は,認知の取り消しができないと定められている今の定めの前身)は,認知をした父母は認知を取り消すことはできない・認知が事実に反している(実際には血縁がない場合)ときでも認知の向こうは求められないという判断です。

 このことをもって,裁判例上は一度認知をした方は認知の無効を求められないと考えているとと絶える考え方がありました。ただし,先ほどの判断は裁判所の判断としてメインの部分ではない(傍論と呼ばれるもの)で,先例としての意味があるとまでは言えないところです。

 

 これに対し,認知をした者も認知の無効を求められるという考え方もありました。長くなりましたので,次回に続きます。

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