法律のいろは

多額の慰謝料・財産分与などを支払う内容の公正証書の効力を争えますか?

2014年1月19日 更新 

 以前、話し合いで離婚をする際には、特に金銭的な請求をするには公証人役場で作成する公正証書による方がよいという話をしたと思います。

 ただ、当事者同士で内容を決めて公正証書を作成したとき、一方は必ずしも納得していないものの、やむなく・あるいは強制されて応じたということがままあります。

 その後、多額の金銭を請求する側から支払よう求められ、支払えなくなった方から、公正証書は自分は内容に納得したわけではないものの、やむなく作成したのだから、無効だ・あるいは強制されて作成したのだから強迫取り消しをしたいということができるでしょうか。

 前にもお話したと思いますが、公正証書とは公証人(通常裁判官や検察官のOBが公証人になることが多いです)役場で作成をする書類で、法曹関係者が関与しており、書面の内容もチェックが入りうることから、通常一般の人が作成した書類と異なる扱いがされています。

 すなわち、金銭的な請求に、強制執行(いわゆる資産への差し押さえが典型です)されても認めますという文言(これを強制執行認諾文言といいいます)が入っていれば、別途裁判でその請求が立つかどうか判断をしてもらうことなく、支払がなければ直接公正証書により相手の資産に差し押さえができることになる、というかなり強い効力が認められているのです。

 このように、当事者の間で話し合いをして決まったとはいえ、公証人の関与による強い効力を与えていることから、一度公正証書で合意書面を作成してしまうと、後で覆すのが難しくなります。

 ただ、公証人は法令に違反しているか、無効の法律行為などで取り消しができる法律行為により公正証書を作成してはならないとなってはいますが、もしそのような点があると気づけば関係者に注意し必要な説明をしなければならないという職務規律にすぎません。それ以上に裁判による厳密な手続きのように、請求の根拠となるものが立つかどうかまで実質的に審査して作成する権利・義務がないため、公正証書作成に至る過程によっては、争えなければ不合理な結果になることがあります。

 ですから、公正証書に基づく金銭的な請求がなされそうな場合に、その請求の根拠となる債務がないことの確認を裁判所に求め(これを債務不存在確認訴訟といいます)たり、あるいは公正証書に基づく支払ができないうちに、財産の差し押さえがされたとき、その請求はそもそも強迫によるものだから取り消されるものである、などという理由で争う(請求異議訴訟といいます)ことで、支払を免れることができるケースもあります。

 裁判例でも、長年配偶者のDVで悩まされた当事者の一方が、自身の不貞行為による多額の慰謝料・財産分与を相手方(DVをしてきた配偶者)に支払う内容の公正証書などを作成したものの、その公正証書などに基づく金銭請求などに対して、強迫によるものであるとして無効主張を認めたケースがあります。

 また、婚姻費用(生活費)・養育費の支払いの場合であれば、こういった裁判によらずとも、公正証書作成時と比較して、収入面などに事情変更があるといえる事情があれば、婚姻費用・養育費減額の調停や審判で争うこともできます。

 

 

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