法律のいろは

離婚と住宅ローン(その⑤)

2014年1月23日 更新 

 これまで何度かオーバーローン(住宅ローン額が家の価値を上回る状態)の場合の家の清算に関するの話をしてきました。この場合,マイナスであるため,家は財産分与の対象にならないと言われています。

 

 ただ,そうなると家の名義人がそのまま家を取得してしまうのかという疑問が出てくるところがあります。この点に関して一昨年地方裁判所のレベルではありますが,興味深い裁判例があります。

 問題となったケースは,ある夫婦が離婚裁判を経て離婚したのですが,夫婦が結婚中に築いた財産は家(住宅ローン付)と預金であるというものです。離婚裁判の判決の中で,家は住宅ローン額と同等の価値であるから,価値はゼロと判断し預金について半分ずつ清算するという判断がされています。離婚裁判で離婚が決まった後に,家に住んでいた元配偶者に対して,名義人であった元んお他方配偶者が自分のものだから出て行くよう求めたものです(無断利用だから,利用料相当額を払えとお金の請求もしています)。

 

 争点となったのは,オーバーローン(厳密には同等の価値)とされて財産分与の対象から外れた家がある場合に,離婚後には名義人だけのものかどうかという点です。財産分与がされていないから,まだ元夫婦で共有ということになれば,出て行く必要はなくなりますので,名義人だけのものかどうかは大きな争点となってきます。

 この争点に関して,判決では次のように書かれています。

 

 ①財産分与の対象から外れたということで,名義人だけのものになってしまうのは,名義人でない方が家の代金(住宅  ローン)の支払いのためにお金を自分の財産(特有財産と呼ばれるもの)から負担していた場合には,不公平な結果になる

⇒一部とはいえ,他人のお金で家の権利を取ることになるからです

 ②だから,名義人でない方がお金を自分の財産から負担していた場合には,離婚裁判を担当した裁判所で,そのお金の出所が判断されていないのだから,離婚裁判とは別に家の権利を判断することは可能

 

 と判断しています。そのうえで,このケースでは

 ・名義人でない方の元配偶者も結婚前からあった自分の貯蓄から相当な金額を家の支払いに充てていること

 ・結婚してから別居前までの住宅ローンの支払いは,結婚中の共通の稼ぎだから半分ずつ配偶者同士でお金を出したといえる

 ・別居後の生活費(婚姻費用)は,名義人が住宅ローンを負担しているから安く設定された。これは,名義人でない方も住宅ローンを固有の財産から負担したものと評価できる

 

 ことを理由に持分1/3を名義人でない方に認めています。つまり,名義人の請求は出て行ってもらうという点では認められませんでした。

 

  特有財産と言いながら,結婚中の共同の稼ぎの部分など特有財産とは本来違うものを特有財産と似たように評価しているきらいがありますので,どの点まで応用できるのかは問題になりそうです。

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