法律のいろは

残業代とは何でしょうか(その⑨)?

2014年3月24日 更新 

 法律上定まっている労働時間よりも多く働いた場合には,給料を割り増しで払う必要があります。一日8時間・週40時間というのがその時間です(深夜残業の話はとりあえずおいておきます)。ただし,「事業場外」で働いていて,どのくらいの時間働いたのかが把握し難い場合には,その例外と言える話が出てきます。前回は,例外と言えるための前提として

 ①「事業場外」で働いていること

 ②勤務時間を算定しがたいこと

 の二つが法律で要求されているという話をしました。前回は,①の話をふれました。今回は,外回りの人を念頭に②はどういうことなのかを触れていきます。

 

 直感的には,外回りの人は,外いいるときには何をしているのかは必ずしも会社は把握できないのだから,当然勤務時間は把握しがたいと考える方がいるかもしれません。しかし,法律上は,会社は従業員の勤務時間を把握する義務があるのですから,ここでいう「算定しがたい」とは,そうした義務を果たしても難しいと言えるものだけということになります。

 これだけだと分かり難いので,25年くらい前ではありますが,役所が例として挙げているものを紹介します。

 ア 何人かのメンバーで「事業場外」で仕事をしている際に,そのメンバーの中に勤務時間の管理をする方がいる場合

 イ 事業場外での業務に従事しているが,無線や携帯電話(25年前の例ではポケットベルなのですが,さすがに古すぎます)を使って,会社側から指示を受けている場合

 ウ 事業場で訪問先や帰社時刻などその日の仕事の具体的指示を受け,指示のとおりの仕事を外でしてきて,事業場に戻る場合

 

 すべての仕事がこういった例に当てはまるわけでもありませんし,こうした例に当てはまらないと②を満たしてしまう(いくら働いても割増の給与がもらえないのかが問題となるため)のかははっきりしません。そのためか,これまで何度も②を満たしているのかは裁判で争いになってきました。今年も最高裁の判断が具体的なケースで出てきたところではありますが,これまでの裁判例を少し見ていきたいと思います。

 一つ目の裁判例

  倉庫等で商品の仕分けや配送をしていた従業員が,残業代を請求したケース。配送に従事している部分について,②を満たすかが問題になりました。このケースでは

 (ⅰ)設定された配送コースを配送しているうえ(ⅱ)タイムカードによって勤務時間が管理されているのだから,勤務時間が算定しがたいとは言えないとされています。

 

 タイムカードの是非は一部では言われているところではありますが,始業と終業の際にはおすことが前提になっているところから,多くのケースでは勤務時間の算定はできるということになりやすいと思われます。長距離のトラックの運転の際には,タコグラフ(運転している時間や速度が分かるグラフ)や作業日報さらには運航予定をかっちり組んであると,中々勤務時間が算定しにくいとは言えないケースが増えてきます。

 

 次回に続きます。

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