法律のいろは

管理者は残業代が出ない(?)その②

2014年4月8日 更新 

 管理職になると残業代が出なくなるという話から,「管理職」とは何だろうかという話を相当前に触れました。今回は出なくなるという「残業代」とは何かという点を触れたいと思います。

 

 一言で残業代と言っても,原則として①一日8時間を超えて(1週間では40時間を超えて)働く分②休日(必ずしも土曜日日曜日ではない)働く分③深夜(午後10時から午前5時までの間で働く分,の3つがあります。これらは重複する場合もあります。今回触れていくのは,「管理職」(法律上は管理監督者)に出なくなるという残業代が①から③の全てなのかどうかという点です。

 

 法律上,管理監督者については,労働基準法で定められた「労働時間」「休日」「休憩」に関する定めは適用されないとされています。この「労働時間」「休日」に①の部分と③の部分の残業代が含まれているのは間違いありません。問題は②が含まれているかどうかです。「労働時間」には「深夜労働」にあたる②も含まれているのは当然という見方は当然出て来るところです。これに対して,深夜労働は特定の時間帯について着目した特別なもので,年少者に対しては特別に働いてはいけないと定めているから,管理監督者についても特別に考えるべきという考え方も出て来るところです。

 

 実際に,どちらの考え方が正しいかが問題になった裁判例があります。ケースとしては,理容や美容を営む会社の「総店長」という肩書で勤務していた方が退社・独立するにあたって,会社側とトラブルが起きたものです。会社側が,顧客情報を持ち出し,会社と同じ事業をすることで会社の利益を侵害しているという理由から損害賠償請求を退社した方にしました。これに対し,退社した方は,残業代を請求したものです。前提として,退社した方は「管理監督者」と判断されています。

 最高裁まで判断がもつれたものですが,残業代の点だけ触れます。第1審と第2審は,法律上「労働時間」「休日」に関するものは「管理監督者」には及ばないのだとして,深夜残業を含め,すべての残業代を認めていません。つまり,①から③すっべてが排除されると判断しています。

 これに対して,最高裁は,先ほど触れた理由から深夜残業は特定の時間帯に着目した特別なものだからということで原則として,「管理監督者」にも及ばないと判断しています。つまり,原則③は排除されないということになります。例外についても判断しています。それは,「管理監督者」に支払われる給与が,就業規則などからみて深夜残業の部分の給料も含んでいる場合です。

 

 簡単に言えば,①深夜残業については「管理監督者」といえども残業代の対象となる

        ②予め給料に残業分を含んで払ったと言えれば,未払いはないから残業代は請求できない

 と理解していいものと思われます。

 

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