法律のいろは

不在で内容証明郵便を受け取らない場合、意思表示は到達したとされないでしょうか?

2014年4月15日 更新 

 たとえば、賃貸借契約を交わしているが、借主が家賃を3か月以上滞納しているので、解除したいという場合、解除の意思表示を相手方に伝えたことを証明するために、内容証明郵便を使うのが一般です。

 この場合に限らず、他の普通郵便でもそうですが、相手方へ意思表示が「到達」したといえるには、相手方が必ずその郵便を受け取らないと効果が発生しない訳ではありません。要は相手方が郵便物を受け取れる状況になれば、その中身も見ることができるといえますから、たとえばポストに投函された、あるいは同居している家族、自営業であれば従業員が受け取れば、到達したと扱われます。

 ただ、こういうケースにありがちですが、借主に宛てて内容証明郵便を送付しても、借主が受取を拒否したり、不在のうちに配達されても1週間郵便局が保管する期間内に取りにいかず、戻ってきてしまうことがあります。

 このような場合には、何度内容証明郵便を送付しても、同じように受け取り拒否、郵便物を取りにいかず戻ってくるという繰り返しになってしまい、郵送代だけかかるということになってしまいます。

 こういう場合には解除の意思表示が相手方にまったく伝わっていないという扱いになってしまうのでしょうか。

 この点、受け取り拒否の場合、判例では意思表示は到達したと認めています。

 不在であった場合はどうでしょうか。

 参考になる判例としては、遺産分割・遺留分減殺請求権(遺産について遺贈などがあったため、法定相続分による相続ができなくなる一定の者につき、最低限の相続財産を受けうる権利)に関するものがあります。遺留分減殺請求権(令和元年7月以降は法律改正により権利の性質も一部変わり遺留分侵害賠償請求権といいます。変更点の大きな部分はお金の支払いを求める話に変わった点になります)については,権利行使の期間が制限されていますので,きちんと届いたと評価されるかどうかは重要になってきます(期間オーバーを避ける必要があるため)。

 この事例では、遺言により全財産の遺贈を受けた相続人に対して、弁護士名で他の相続人が遺留分減殺請求権を主張する旨内容証明郵便を送付したものの、不在で、仕事が多忙などという理由で取りに行かず、保管期間が経過して弁護士のところに戻ってしまったというもので、このような場合でも遺留分減殺の意思表示が、到達したと認められるかが争われたものです。

 最高裁判所は、不在配達通知書の記載から、弁護士から内容証明郵便が送られてきたことを知り、それが遺産分割に関するものではないかと推測していたこと・弁護士のところに行き遺留分減殺について説明を受けていたという事情があったこと、さらに多忙とはいえ郵便物を受け取ろうと思えば受け取り方法を指定して内容証明郵便を受け取れたという事情から、遺留分減殺の意思表示が遅くとも保管期間が満了した時点で到達したと判断しています。

 この判例にしたがって考えると、たとえばおよそ内容証明郵便の中身が分かりえなかった・あるいは受け取ろうと思っても海外に出かけて長期間不在であったため受け取れなかった、といった事情があれば意思表示が到達したとみるのは難しいでしょう。

 最初の事案の場合ですと、家賃の支払いが滞っていて、弁護士からなにがしかの郵便が来ることへの心当たりがある、特に長期にわたって不在で受け取れなかったといった事情がなければ、郵便を受け取りにいかず、保管期間が経過したときに解除の意思表示が到達したとされる可能性もありうるでしょう。先ほどの遺留分に関する話だけでなく契約解除や請求の通知など相手に届く扱いが重要になる場合には無視できない話になります。

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