法律のいろは

残業代とは何でしょうか(その⑩)?

2014年5月15日 更新 

 法律上定まっている労働時間よりも多く働いた場合には,給料を割り増しで払う必要があります。一日8時間・週40時間というのがその時間です(深夜残業の話はとりあえずおいておきます)。ただし,「事業場外」で働いていて,どのくらいの時間働いたのかが把握し難い場合には,その例外と言える話が出てきます。前回は,例外と言えるための前提として

 ①「事業場外」で働いていること

 ②勤務時間を算定しがたいこと

 の二つが法律で要求されているという話をしました。

 

 前回は,どんな場合が②にあたりうるのかということで,役所の出している基準とこれまでの裁判例をいくつか取り上げてみました。実は,この問題について,今年の1月に最高裁の判断が出たものがあります。今回紹介します。

 

 問題となったケースは,旅行会社に個別のツアーごとに添乗員として派遣されていた方が,派遣先で長時間働いたこと等を理由に先ほど書いた割増賃金を請求したものです。旅行会社ではなく派遣会社に対する請求に違和感を覚えている方がいるかもしれませんが,あくまでも勤務先は派遣会社(働く場が派遣先)ということですので,このような形で給料を請求することになります。簡単に言えば,勤め先と働く場が違うけれども,勤め先から給料をもらうという話ですね。

 

 この裁判では,ツアーの添乗員である以上は,当然会社の営業所で仕事をしている訳ではなく外で働くことになります。ここで先ほどの①は満たしそうですけれども,問題は②の点を満たしたかどうかという点です。つまり,ツアーに付き添って外で働いているからということで,勤務時間を会社が把握しがたいかどうかという点です。

 この裁判の判断では,あくまでもこの旅行会社を通じてどのようなことを派遣会社が把握できたかが証拠に基づいて,認定されています。

 ちなみに,こうした派遣勤務では,法律上,派遣先(このケースで旅行会社)は派遣会社に勤務日の始業と終業の時間を伝える(前提として台帳で管理する)義務があります。

 

 直感的には,旅先のいろんなことは予測できないこともあるから勤務時間は分からないのではないかという意見と時間ごとにパッケージ化されているのだから,勤務時間は分かるはずだという意見があるかもしれません。

 この裁判の判断自体は,添乗員用のマニュアルで書かれた業務の内容や日報などに基づいて判断しています。その詳細は次回に触れたいと思います。

 

 

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